「全部、カガリが悪いんだ! カガリとあいつが邪魔をしなければこんなことにはならなかったんだよ!」 ユウナがそう訴えている。 「……元はと言えば、お前があの二人をきちんと御せなかったのが原因だろう?」 ウナトがそう言い返してきた。 「あの二人のことは自分に任せて欲しい。そう言われたから、我々は手を出さなかったものを」 その結果がこれか、と彼は続ける。 「カガリのことはボクが悪いんじゃないでしょ!」 強引に結婚に持ち込もうとしたのは誰だ、と逆にユウナが言い返す。 「あれで、絶対にキラが怒ったんだ」 その結果があの一件だろう。そのせいで、自分が笑いものになったではないか……と彼は続ける。 「……あれは……」 「キラのことだって、後もう一息だったのに……」 あちらこちらをつついて、うまく言うことを聞かせる方法を見つけられたところだったのだ……と言うのは負け惜しみではないか。 どちらにしても、この親子に大きなことが出来るはずがない。このまま、上野か以来でいるのが関の山だろう。 もっとも、それだからこそ、この親子が選ばれたのではないだろうか。 カリスマ性というのであれば、現状ではカガリ・ユラ・アスハに勝るものはいない。ナチュラルで唯一の《英雄》と言うだけではない。彼女の存在そのものが人目を惹きつけずにいられないのだ。 何よりも、彼女の傍にはキラ・ヤマトがいる。 彼の存在も自分たちにとっては驚異だ。だからこそ、排除しようというものと味方に引き入れようという者達の対立があるのだろうが。 「どちらにしろ、俺には関係がないな」 ぼそっとそう呟く。 目の前の愁嘆場にも、だ。 しかし、と心の中で呟く。何故か《キラ・ヤマト》と言う人間のことを考えようとすると自分が知らないはずの光景が視界をかすめる。 あるいは、自分が失った記憶に彼が関係しているのだろうか。 しかし、それがわかったとしてどうなるものではないだろう。 だから、と無理矢理脳裏から消去する。それが成功しているかどうかはわからないが。 「それでは、私はこれで失礼をしますよ」 後のことはご自分たちでどうぞ、と言外に告げるときびすを返す。 「大佐!」 それは、と慌てたようにウナトが呼びかけてくる。 「これから、別の作戦に参加しなければいけませんのでね」 それに、これ以上は内政干渉になるのではないか。ただですら、 それに、大きな作戦が待っているというのも嘘ではないし、と言いながら歩き出す。 己の背後でセイラン親子が何かを口にしているのも聞こえた。だが、それすらも自分には関係ない。 「あいつらを連れて、さっさとこの国から出て行くか」 ここにいるから、自分は余計なことを考えてしまうのかもしれない。 戦場なら、余計なことを考えずにすむ。 しかし、それはあの三人を戦いの道具として使うということと同義でもある。そのことが、彼等の寿命を縮めていくと言うこともわかっていた。 だが、自分に何が出来るというのか、と自嘲気味に笑う。 自分も結局は歯車の一つでしかないのだ。 そんな自分に出来ることと言えば、少しでも彼等の命を長らえさせるように作戦を考えるだけだ。 いや、それしかできない……と言った方が正しいのか。 だからといってどうすることも出来ない。 「せめて、俺に全てを捨てられる覚悟があれば、な」 それすらも、自分にはない。結局、自分は首輪をつけられたまま吼えるしかないのだ。 だが、それも仕方がないことだ、と諦めている自分がいる。 「みんな、さっさと諦めれば、俺だけと思わずにすむんだがな」 小さなため息とともに言葉をはき出す。そして、今度こそ、その場を後にした。 |