結論を出せるところまで話し合いが進んだわけではない。 しかし、会談を切り上げなければいけなくなったのはミネルバからの連絡があったからだ。 「残念ですが……地球軍が動いたようですのでね」 流石に、ここでのんびりしているわけにはいかない。そして、キラ達を危険にさらすわけにもいかない、とデュランダルは告げる。 「……オーブ軍も同行しているのか?」 カガリがこう問いかけた。 「残念ですが、姫。そこまではわかりかねます」 知っていたとしても教えられない、とデュランダルは付け加えた。 「そうだな。私たちがまた邪魔する可能性がある以上、それは当然の判断だ」 カガリはそう言って頷く。 「って、あんた達、また……」 乱入してくるつもりか、とシンは問いかける。 「もちろんだ。もっとも、キラが付き合ってくれるならば、の話だがな」 自分では自分の身を守るのが精一杯で、パイロットの命までは守れないから……と彼女はいう。 「それに……私には私の義務がある。もっとも、そちらにしてみれば面白くないことかもしれないが」 だが、それでも……と彼女が続けようとしたときだ。キラが何かに気がついたという表情を作る。そのままポケットから通信機らしきものを取りだした。 「……バルトフェルドさん?」 何かあったのですか? とキラはそれに向かって問いかけている。 次の瞬間、彼の表情が強ばった。 「アスラン、ですか?」 そのまま、こう呟いているのが聞こえた。 「アスラン?」 「彼がどうしたのかね?」 即座にカガリとデュランダルが問いかける。 「……ザフトの信号を出している赤いMSがこちらに向かっているそうです」 先日見掛けた新型だ、とバルトフェルドが言っている……と彼は続けた。 「……赤い新型なら、セイバーだよな」 シンは隣にいるレイに話しかける。 「間違いなく、アスランだろう」 それにレイも頷いてみせた。 「待機していろ、と指示を出したつもりだったのだがね」 事態が変わったから良いと思っているのだろうか、とデュランダルは顔をしかめる。 「とりあえず、さっさとおいとまをして戻ってこい、だって」 でないと、帰るに帰られなくなると思うぞ……と言っている。そうキラは続けた。 「だな」 アスランだから、とカガリも頷く。 「すまないが、議長」 そう言うことだから、と彼女はそのままデュランダルに視線を向けた。 「わかっていますよ、姫。それにキラ君も」 あの方の怒りは買いたくない、とデュランダルは苦笑と共に頷き返す。 「アスランはこちらで足止めをしておきましょう」 さらに彼はこう付け加えた。そのまま、彼は視線をシン達へと向けてくる。 「わかってます」 それにシンはこういって笑った。 「だから、安心してください」 キラに視線を向けるとこういう。 「うん、またね」 キラはこういって微笑んでくれる。その一言だけで嬉しいと思うのは、何故だろうか。 「はい」 思わず、大きく頷いてしまう。 「それと、君にも」 レイ、くん……とキラは続ける。 「機会がありましたら」 レイにしては珍しく柔らかな表情でこう言い返したのはどうしてか。きっと《ラウ・ル・クルーゼ》が関係しているのだろう。でも、それは聞いてはいけないような気もする。 「では、失礼します」 この言葉とともに遠ざかっていく二人を見つめながらシンはそう考えていた。 |