ラウ・ル・クルーゼ。  その名前はアカデミーでは禁句に近い。有能な軍人ではあったが、それだからこそ、己の才能におぼれ、戦争を影で操ろうとした。そのせいで、あの戦争は長引いたのではないか。
 そう教えられた。
 だから、キラと会っていたとしてもおかしくはない。
 しかし、それとレイ達の反応が今ひとつ結びつかない。
「……貴方は、ラウを知っているのですか?」
 ようやく、レイが絞り出すように言葉を口にした。
「メンデルで、会いましたから……」
 キラが辛そうに言葉を重ねる。
「そうか」
 あそこでね、とデュランダルも頷いて見せた。
「私は、そんなこと聞いてないぞ!」
 お前、とカガリが慌てたようにキラに視線を向ける。
「……いろいろあったでしょ、あのころは」
 フラガがケガをしたり、フレイが地球軍に連れて行かれたり……とキラはますます辛そうな表情で口にした。
「そうだったな……すまない」
 忘れていた、とカガリも言葉を返している。
「とりあえず、それに関してはお前が話したいと思ったときにでも話してくれ」
 幸か不幸か、アスランも今はいないしな……と彼女は付け加えた。
 と言うことは、アスランがいると話をさせてもらえないと言うことか……とシンは心の中で呟く。彼ならば、十分にあり得ることだ。
「……と言うことは、君は彼の秘密を?」
「聞いています。本人の口から」
「そうか」
 デュランダルが重いため息をつく。と言うことは、彼には自分たちも知らない秘密があると言うことだろう。
 まぁ、秘密を持たない人間なんてこの世界にはいないし……とシンは直ぐに付け加えた。
「では、隠していても仕方がありませんね」
 レイが何かを決意したかのように口を開く。
「俺は、彼と似て非なる存在です……少なくとも、彼のように世界を滅ぼしたいとは思っていません」
 できれば、誰かを守ることで大切な人たちの記憶に残りたい。そう考えている……と彼は続けた。
「そう、なんだ」
 やっぱり、君は彼とは別の存在なんだね、とキラは淡い笑みを浮かべる。
「さて……納得してくれたところで本来の話し合いに移っていいかな?」
 デュランダルはそう言いながら視線をカガリへと向けた。
「そうだな。でないと、どこから何が出てくるかわからない」
 即座に彼女が言い返す。
「……地球軍の連中なら、来たら直ぐに連絡が来ると思いますけど?」
 ザフトだって気をつけているし、とシンは口を開く。
「まぁ、それも心配だけど、な」
 もっと厄介なのがいるだろう、とカガリは即座に言い返してきた。それもザフトに、と続けられる。
「……誰だよ、それ……」
 反射的にそう言ってしまう。
 しかし、直ぐにある顔が脳裏に浮かんだ。
「って……まさかと思うけど、アスラン?」
 そのまま問いかける。
「まぁ……否定は出来ないかな?」
 アスランだし、とキラは苦笑を浮かべた。
「そうだな。アスランだし……ここにはキラも私もいるからな」
 あいつにしてみれば、直ぐにでも押しかけてきたい、と思っているのではないか。カガリはそう言う。
「あんたは、ずいぶんとあいつを頼りにしていたようだけど?」
 なのに、そんなことを言うんだ……とシンは問いかけた。
「あの時は、キラが絡んでいなかったからな」
 キラが絡んでいるときのアスランの理性は、信用が出来ない。ついでに、キラに対する言動も、だ。
「と言うわけで、これからどうなるにしろ、あいつの引き取りは拒否させてもらうからな」
 責任を持って監視をしてくれ。そう言うカガリに、デュランダルは苦笑を浮かべていた。



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