アークエンジェル側の希望は、即座にデュランダルに伝えられた。
「そう言うことだからね。君には待機して貰うことになる」
 苦笑と共に彼はアスランにそう言う。
「代わりに……そうだね。レイとシン君に護衛をして貰おう」
 そのまま、視線を二人に移すと言葉を重ねた。
「構わないね」
 そのまま確認するように問いかける。
「はい」
「もちろんです」
 彼等は即座に言葉を返した。シンの表情が嬉しげに見えるのも、アスランの錯覚ではないだろう。
「では、その予定で」
 話はおわりだ、と言うようにデュランダルは腰を浮かせた。
「納得できません」
 反射的にアスランはこう口にする。
「納得できない、と言われても……君を同行させないで欲しい、と言うのがあちらの希望だが?」
 こちらから会談を希望した以上、出来ることは最大限譲歩すべきではないのか。デュランダルはそう言い返してくる。
「それでないとしても、万が一のことを考えれば誰かはこちらに残らなければなるまい」
 直ぐに対処が取れるように。そして、できれば自分の代わりに判断を下せる人間の方がいい。
「そのための《FAITH》だと思っていたが?」
 それとも、君は己の義務よりも欲求を優先するのか。彼はそう問いかけてくる。
「あの二人を守ること以上に優先すべき義務はありませんが?」
 アスランはそう言い返す。
「やっぱ、あんたってサイテーだよな」
 その言葉を耳にした瞬間、シンがこういってきた。
「……何が言いたい」
 アスランが即座に言い返す。
「会いたくないって言うのがキラさん達の希望なんだろう? それなのに、自分の意志の方を優先しようとしているじゃん」
 相手が何でそうしようとしているのか。それも考えずに、と彼はさらに言葉を重ねる。
「結局、自分のことしか考えてねぇって事だろ」
 だから、最低だ、と言っているのだ……とシンは付け加えた。
「勝手なことを」
 何も知らないくせに、と言い返す。
「あんたとキラさんの関係はよくしらねぇけど、今までの言動を見ていれば、どんなことをするか想像がつくからな」
 人の話には耳を貸さず、自分の主張だけ繰り返す。それでは話し合いにならないのではないか。
「……いつ、誰がそんなことをした?」
 はっきりって、言いがかりではないか。
「やっぱ、自覚してなかったんだ」
 あきれたようにシンが言い返してくる。
「どちらにしても、これは決まったことだよ。だから、君が何を言おうとも、指示は変わらない」
 アスランはミネルバで待機だ、とデュランダルはいう。
「それとも、命令違反を覚悟でついてくるかね?」
 その場合、アスランであろうと処罰をしなければいけないだろうが……とデュランダルは付け加えた。
「……何故、ですか?」
 何故、皆がこんなにも自分の邪魔をするのか。アスランはそう思う。
「世界は君だけのためにあるわけではない。そう言うことだよ」
 どれだけ、力を手に入れようと、叶えられないことがある。それでも、自分の出来る限りのことをしようというのが人間ではないか。彼はそう告げた。
「君がオーブからの使者のままであれば、好きにしていい……と言った所だがね」
 しかし、それでは何も出来ない。
 最悪、報告すら耳に入らなかったのではないか。
 だから、自分はザフトに入ったのだ。
 しかし、それが自分の首を絞めることになるとは思わなかった……と心の中で呟く。
「……よく考えるのだね」
 そんな彼に追い打ちをかけるようにデュランダルは言葉を投げかけてくる。それにアスランは返す言葉を見つけられない。ただ、悔しげに唇を噛むだけだった。



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