「困りましたね、ユウナどの」
 そう言われても、自分だってどうすればいいのかわからない。それがユウナの本音だ。
「カガリ・ユラ・アスハとフリーダム。そしてアークエンジェル……我々には無視できない存在です」
 カガリ・ユラ・アスハは偽物だったとしても、後者はそうではない。
 だから、と仮面で顔を隠した相手が視線を向けてくる。
「そちらで何とかして頂かないと困りますな」
 どうにかしろと言われても、と心の中で呟く。
 あれが本物の《カガリ》だと言うことは、兵達も皆知っている。
 それでも、彼女に攻撃をしかけたのだからほめてやってくれてもいいのではないか。
「別に、暗殺をしろとは言いませんよ。万が一、本人だったら困りますし……何よりも、フリーダムに本気になられてはまずい」
 フリーダムが本気で自分たちに攻撃をくわえてくれば、この艦隊くらい、一機で壊滅させられるだろう。
 ユウナにも、それは簡単にわかる。
 だからこそ、自分は彼を己の陣営に引き入れようとしたのだ。
 しかし、キラはそれを聞き入れようとはしなかった。それがどうしてなのか。未だにわからない。
 自分からすれば、あれはかなりの好条件だったと思えるのに……とユウナは心の中で呟く。
 それが伝わったわけではないだろう。
「かといって、あの様子ではこちらに協力をしてくれる気配もなさそうですし」
 言外に、ユウナが何かをしでかしたのいではないか。そう彼は問いかけてきた。
「別に、僕は……キラに無体をしいてなんていない!」
 とっさにこう叫んでしまう。
「なるほど……それは嫌われて当然ですな」
 それだけで状況を推測したのだろう。彼はあきれたような視線を向けてくる。
「ともかく、敵に回らなければそれでいい。早急に対策を取って頂こうか」
 そのまま、彼はそう告げた。
「……対策?」
 いったいどうしろと言うのか。そう思いながらユウナは相手を見つめる。
「それはご自分で考えられるのですね」
 無能と思われたくなければ、と彼は言い返す。
「……そんな……」
 自分は無能ものではない。
 それを示したいが、いったいどうすればいいのだろうか。直ぐに思い浮かばない。
「では、善処してくださいよ」
 期待していますから、と彼は笑う。
「ノアローク大佐」
 そのままきびすを返した彼をユウナは反射的に呼び止める。
「まだ、何か?」
 それに彼は視線だけを向けてきた。
 しかし、何を考えていたわけではない。さて、どうしようか、と思いつつ一番最初に思いついたセリフを口にする。
「……期日とかは……あるのですか?」
 確認しておかないと、と卑屈な笑みと共に問いかける。
「特に決まってはおりませんがね」
 ただ、と彼は続けた。
「あちらがどう考えているかわかりませんし」
 既に動いているかもしれない。そう言われた瞬間、ユウナは頬がひきつるのを感じた。
 確かに、邪魔なアスランをプラントに行かせた。だが、その彼をあちらが利用しないとは限らないのだ。
 しかし、あの時はアスランをカガリから引き離す必要があったことも事実。
 それも、今となってはいいわけのようにしか聞こえないだろう。
「……わかりました」
 自分が何とかするしかない。しかし、どうすればいいのか、まったくわからない。
 どうして、あの双子は自分たちの邪魔しかしないのだろうか。
 せめて大人しくしていてくれればいいのに……と思いつつ、ユウナは唇を噛むしかできなかった。



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