カガリの思惑とは微妙にずれたが、確かに戦闘は終わった。 しかし、それが彼女の心に傷を付けた、と言うことも事実だ。 「……何故……」 呆然と彼女は呟いている。 「あいつらが軍人だからだ」 そう言ったのはバルトフェルドだ。 「軍人である以上、どのような理不尽な命令でも従う義務がある。国の代表であるお前がそれを理解していなかったとはな」 今、彼等を指揮しているのはユウナだ。 だから、彼等にはそれに従う義務がある。 「……一番、辛い思いをしているのは、彼等だよね」 彼等のカガリに対する気持ちは変わっていないはず。だが、今の彼等の立場ではユウナの命令に従わざるを得ない。 板挟みで辛いのではないか。 キラは呟くようにそう言った。 「……それは、わかっている」 自分のこの目で見たのだから、とカガリは言葉を返してくる。 「でも、止められると思ったんだ」 彼等を、と彼女はうつむく。 「……それに、何であいつがザフトにいるんだ?」 あれは、間違いなくあいつだっただろう? と彼女は顔を上げると問いかけてくる。 「あれ、と言うと……ザフトの新型かね?」 バルトフェルドにも思いあたるものがあったのだろう。即座にこういった。 「二人とも、そう思うんだ」 と言うことは、自分の思い違いではないと言うことだろう。だとするならば、本当にどうして……とキラはため息をつく。 「あの人のことですから、何の考えもなくそのようなことをしたとは思いたくありませんが……言いくるめられたという可能性も否定できませんわ」 本当にどうしてやりましょうか、とラクスが微笑む。 その表情に、恐怖を感じたのも自分だけではないようだ。バルトフェルドもまた頬をひきつらせている。 「ともかく、だ」 それでも、彼は直ぐに口を開く。 「本人に真意を確かめなければいけないだろうな。もっとも、その機会があるかどうかはわからないが……」 自分たちの行動を彼等がどう思っているのかもわからない。だから、と彼が言ったときだ。 「そのことなんだけど」 言葉とともにマリューが姿を現す。 「マリューさん?」 どうしたのか、とキラは思わず問いかけた。彼女がブリッジを離れるのは珍しいと言っていいのだ。 「あちらから連絡が入ったの」 本当に、どうやってアークエンジェルの回線を特定したのかと思っていたのだが……とため息をつく。 「アスラン君がいるのであれば、納得だわ」 彼も、それは知っているから……と彼女は付け加えた。 「変えておくべきだったかしら」 回線のコマンドを、と呟いた声には、後悔の念が滲んでいる。 「予想外のことだったからね。仕方がないのではないかな?」 そんな彼女を慰めるかのようにバルトフェルドが口を開く。 「そうですね。アスランが戻ってくるときはもっと別の方法を使うと思っていましたから」 キラもそう言って頷く。 「どちらにしても、あったら一発殴らないとな」 ニヤリ、と笑いながらカガリがいう。 「その後でお小言ですわね」 さらにラクスがこういって笑みを深める。 「……アスランに、少しだけ同情するな」 これは、とバルトフェルドが呟く。 「否定出来ませんね、本当に」 マリューがため息とともに頷いた。 「まぁ。覚悟の上でしょうね、アスランも」 忘れていたら、その時はその時でしょう……と言う以外、キラに出来ることはなかった。 |