「……フリーダムが?」
 シンの報告からさりげなくキラ達の動きを確認させていた。それが功を奏した、と言っていいのだろうか。そう思いながらもデュランダルは顔をしかめた。
「いったい、何がねらいなのか」
 キラ本人か。それとも、彼が持っているディスクか。あるいは、ラクス・クラインという可能性も否定できない。
「シン君も、あのディスクの中身だけはがんとして教えてくれないらしいからね」
 キラとの約束らしい。
 プラントの最高責任者としては失格かもしれないが、と彼は笑みを深める。
「そう言う律儀な性格の子は嫌いではないからね」
 だが、それだけでは世間を渡っていけない。誰かの捨て駒になって終わる可能性もある。
「そのあたりのことは、レイがフォローするだろうが」
 だから、心配はいらないだろう。
「問題は、彼等の方だね」
 フリーダムが再び姿を現したと知れば、あの連中ブルーコスモスが黙ってはいないだろう。今まで以上に彼を手に入れようとするか――あるいは排除しようとするか――どちらにしろ、行動を起こすことは目に見えている。
「こういうときに彼がここにいてくれるのは良いことなのかね」
 少なくとも、キラを縛り付けるかもしれない鎖の一端は自分の手の中にあると言うことだ。
「だが、そのせいで姫の守りが薄くなってしまった」
 そして、彼女の居場所は、今現在、掴めていないのだとか。
「厄介だね」
 しかも、自分は今、プラントにいる。何かあっても、直ぐには動けない。
「彼等の傍に、バルトフェルド隊長がいてくれることだけが救いかな?」  彼であれば、適切な判断をしてくれるだろう。
「出来るだけ、手助けが出来るようにしておくべきだろうね」
 それでも、と呟いた。

 カガリの居所がしれたのは、それから直ぐのことだった。

 流石にこのままでは暮らしていられない。その彼等を引き取ってくれたのはロンド・ミナだった。
「……結婚? カガリとユウナ・ロマが?」
 そこで、この話題を聞かされた。
「それは、カガリさんの本心なのでしょうか」
 ラクスが即座にこう告げる。
「それは、あり得ないと思うよ」
 ユウナ・ロマはカガリが一番嫌いなタイプだ。そんな相手といくら政略結婚とはいえ、彼女がするはずはない。
 第一、自分でそう決めたのであれば、姿を隠すはずがないのだ。
「……強制されている、と言うことですか?」
「だろうな」
 だから、アスランをプラントに追いやったのだろう。
「でも、これはチャンスですよね?」
 キラは呟くようにそう言った。
「キラ?」
「結婚式なら、大々的にやるでしょう?」
 こういえば、他の者達にもキラの言いたいことがわかったようだ。
「なら、アークエンジェルの整備を急がせないと」
「こちらのことは心配いりませんよ、キラ君。私たちのことはロンド・ミナ様が守ってくださるでしょう」
 そして、その間に自分たちも安全に過ごせる場所を確保する。
「ですから、あなた方はご自分のなすべきことを優先してください」
 オーブの理念を完全に消すわけにはいかない。だから、とマルキオも口にした。
「はい」
 わかりました、とキラは頷く。
 しかし、これでまた、母を一人にしてしまう。もっとも、子供達が一緒にいてくれるから寂しくはないだろう。だから、それよりも、今は、オーブという国が中立でいられるために努力をするしかない。
「……しかし、後でカガリに殴られることは覚悟しておくべき、だよね?」
 キラは苦笑と共にこう告げる。
「大丈夫ですわ、キラ。人身御供を差し出せば良いだけです」
 それは『人身御供』と書いて『アスラン』と読ませるのだろうか。ラクスの言葉に、直接そうつっこめるものは誰もいなかった。



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