シン達は無事に危機を乗り越えたらしい。その事実に、キラはほっとする。
「よかった」
 そうは言っても、本当に彼が無事なのかはわからない。だが、きっと無事なのではないか。キラはそう考えようとした。
「そうなると、後問題なのはカガリのことだね」
 彼女がどこにいるのか。何とかしてそれを確認しないと……と呟く。
「とりあえず、カガリは発信機を持っているはずだから」
 その信号を確認すれば何とかなるのではないか。
 こう考えていたときだ。
「キラ」
 頬をひきつらせながら母が彼を呼びに来た。
「どうしたの?」
 何か、厄介なことが起きたのか。そう思いながら聞き返す。
「……ユウナ・ロマ様がおいでなの」
 マルキオが呼んでいる。そう言われて、キラは小さなため息をついた。
「仕方がないね」
 会いたくはないが、会わなければいけないか。キラはそう考えて立ち上がる。
「大丈夫?」
 自分が彼を嫌っていることを知っているからだろう。カリダが不安そうに問いかけてくる。
「大丈夫だよ。それに……ひょっとしたら、カガリの居場所を知っているかもしれない」
 だから、と続けた。
「それに、マルキオ様も同席してくださっているし」
 彼がいてくれるのであれば大丈夫だ。何よりも、きっと、バルトフェルドが隠れてあれこれしてくれるに決まっている。
 ここまで言えば、彼女も納得したらしい。
「わかったわ。でも、無理はダメよ?」
 そう言われて、キラは小さく頷く。そして、微笑んで見せた。

 しかし、何度顔を合わせても不快感しか感じられない。
「……だからね。カガリも同意をしてくれたから大西洋連合との同盟を結ぶことになったんだよ」
 その言葉を鵜呑みに出来ると思っているのだろうか。
「そうなるとね、コーディネイターには出ていって貰わないとね」
 もっとも、と彼は続ける。
「モルゲンレーテの技術者のようにボクたちのために働いてくれている人間は別だけどねぇ」
 彼等とその家族には特別に居住許可を与えるよ……と彼は笑う。
「で、君はどうするのかな?」
 今のままではここにいられなくなるが、と彼は続けた。
「もっとも、ボクのために力を貸してくれると約束するなら、特別に許可をあげるよ」
 ここにいる他の者達にも、といいながら、彼はキラの手を自分のそれで包む。その瞬間、キラの全身を駆け抜けたのは嫌悪感だけだ。
「その必要はありませんよ、キラ君」
 心配はいりません、とマルキオが口を挟んでくる。
「ロンド・ミナ様が、ご自分の居城に我々を保護してくださるそうです。ですから、そちらの方のお申出をお断りしても何の支障もありません」
 微笑みながら、彼はそう言った。
「……そうですか」
 ほっとしながら、キラはユウナの手の下から自分のそれを引き抜く。
「……なら、何も心配はいりませんね。僕だけであれば、どこに行っても何とかなりますから」
 そう言いながら彼はユウナをにらみつけた。
「後悔するぞ」
 せっかく、自分が手を貸してやろうと思ったのに。そう言いながら、彼は椅子を倒しながら立ち上がった。
「後で、何を言ってきても、ボクは知らないからな」
 そう言うと、彼は足音も荒くでていく。
「マルキオ様……」
「大丈夫ですよ。準備は終わっています」
 子供達には申し訳ないが、また引っ越しですね。そう言ってマルキオは笑う。
「しかし、カガリ様がそのようなことをお認めになるとは……」
 彼はそう言って顔をしかめる。
「そうですね。カガリらしくない」
 だから、彼女の本意を確認しないと。キラもそう言って頷いて見せた。



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