アスランが急遽、プラントに行くことになった。その事実に、何か、別の思惑があるのではないか。そう思ったのはカガリ達だけではない。
「……とりあえず、向こうにいる連中には連絡を入れておく」
 バルトフェルドが渋面を作りながらこういった。
「後は……あいつらだな」
 アスランと同じように、連中には彼等も邪魔なはずだ。だから、と彼は続ける。
「ザフトの方々、ですか?」
 シン達、とキラは問いかける。
「あぁ。セイランにしてみれば、絶好の生け贄だからな」
 地球軍に対する、とバルトフェルドは頷く。
「とりあえず、あちらの動きには気をつけておきます」
 マザーをチェックすれば大丈夫だろう。キラは心の中でそう付け加えた。
「とりあえず、昨日、マリュー達に確かめてみたがね。出航には問題ないそうだ」
 いっそのこと、今のうちに出航させた方がいいかもしれない。
「……ですが……」
 彼等に何と言って出航を促すのか。キラのこの問いかけに、バルトフェルドは首をひねる。
「やはり、地球軍がこちらに来ているかどうかを確認して貰おう」
 そうすれば、彼等にも退去を勧告しやすい。
 その言葉に、キラも頷く。
「では、直ぐにかかりますね」
 そのまま立ち上がる。
「あぁ、キラ」
 そんな彼をバルトフェルドが呼び止めた。
「何でしょうか」
「ついでに、プラントの方の動きもチェックしておいてくれ。万が一のことがあるからな」
 最悪、自分たちはあちらに行かなければいけないだろう。彼はそう続ける。
「そうですね」
 確かに、そうなるかもしれない。
 しかし、それは母達と離れ離れにならなければいけないと言うことだ。できれば、それは避けたい、と思うのはワガママなのだろうか。
「何。マルキオ様にはマルキオ様で何か考えがあるらしいぞ」
 それが完成すれば、自由に会いに来られるようになるのではないか。バルトフェルドは笑った。
「まぁ、それも最悪のパターンだ。そうならないようにカガリが動いているはずだから、彼女を信じよう」
 アスランにしても、馬鹿な行動は取らないだろう。彼はそう続ける。
「しかし、セイランを何とか黙らせたい、な」
 どうすればいいだろうか、と彼は考え込む。
「まぁ、いい。そちらに関しては俺が考えておく。お前は情報の方を頼む」
 そう言う悪だくみは、自分の方が得意だからな……と彼は付け加えた。
「ついでに、ノイマンにも手伝わせよう」
 さらに彼は言葉を重ねると、獲物を前にした虎のような笑みを浮かべる。
「バルトフェルドさん?」
 彼がかつて何と呼ばれていたのか。キラは今更ながらに思い出す。
 同時に、彼に全てを任せてしまってもいいものか、と悩む。
「こういうのは、年長者の仕事だ」
 自分は得意だからな、と彼は続ける。
「だから、こういうときぐらいは素直に甘えておけ」
 言葉とともに彼は手を伸ばしてキラの頭を撫でた。
「僕は、もう子供じゃないです」
 思わず好意言い返してしまう。
「何を言っているんだ。まだまだオコサマだよ、君は」
 自分たちから見れば、と彼は笑った。
「何年経とうとね」
 そう言うものだから、あきらめろ。こういわれて、キラは小さなため息をついた。



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