ヴィア・ヒビキの研究記録。
 それが、ディスクの中に収められていたものの大半を占めていた。
「……これは……」
「あぁ。信用できる人間以外には、存在を教えない方がいいだろうな。当面はカガリも含めて、だ」
 彼女は信用できるが、その周囲の連中はどうか、まだわからない。バルトフェルドはそう続ける。
「シン・アスカ」
 そのまま、厳しい口調で彼は視線を向けてきた。その迫力は何なのか。そんなことも考えてしまう。
「何でしょうか」
 あるいは、これが彼が言っていた経験の差、なのだろうか。
「申し訳ないが、今見聞きしたことは他言無用で頼む」
 でなければ、厄介なことになりかねない。そう彼は続けた。
「何故、ですか?」
 意味がわからない。だから、素直に聞き返す。
「これが知られれば、この技術を使ってよからぬことを企むものも出てきかねない。その結果、子供達を危険にさらすわけにはいかないからな」
 セイランあたりであれば、これを手にするために子供達に危害を加えることぐらいするだろう。
 そして、自分たちは現在のプラントがどのような状況なのかを知らない。
「プラントの上層部がどのように考えているのか。それを見極める時間が欲しい」
 さらに彼はそう続けた。
 それはもっともな視聴なのではないか。しかし、とシンが思ったときだ。 「……でも……」
 キラが不意に口を開く。
「わかっている。それに関しては、別問題だ」
 そして、シンに告げるべきことではないだろう、とバルトフェルドが彼を諫めるようにいう。
「そう、ですね」
 確かに、シンには言わない方がいい。キラもそう言って頷く。
「何で、ですか」
 思わずそう問いかけてしまう。
「プライベートの問題だから、だ」
 キラの、とバルトフェルドは真顔で続ける。
「俺は相談を受けたから知っているが、カリダさんは知らないはずだ」
 そう言うデリケートな問題だからな、と彼は付け加えた。
「……わかりました」
 そう言うことならば、仕方がない。でも、何か面白くない、と思ってしまう。
 キラのことならば、何でも知っていたい。
 こう考えてしまうのはどうしてか。
 だが、子供達やマルキオに被害が及ぶのも困る。それに、カリダが知らないのであれば、妥協するしかないだろう。
 でも、いつか教えて欲しい。そうも考えてしまう。
「とりあえず、これに関してはお前が保管しておけ」
 ロックは厳重にな、と付け加えながら、バルトフェルドはそれをキラへと手渡す。
「わかっています」
 ディスクを受け取ると、キラはしっかりと胸元へと抱きしめた。
「……大丈夫なんですか?」
 どこかに隠しておかなくて、とシンは問いかけてしまう。
「こいつの作るプログラムは、ザフトの情報局でも直ぐには解析できないからな。心配するな」
 それよりも、と彼は笑みを浮かべる。
「そろそろ食堂に行かないと、子供らが騒ぐぞ」
 シンも時間に間に合わなくなるのではないか。そう彼は続けた。
「それはまずいですね」
 軍人なら、とキラも頷く。
「なら、戻るとするか」
 食事の後で送っていってやろう。そう言われる。
「ありがとうございます」
 それはきっと好意なのだろう。そう思いながら、シンは頷いて見せた。



BACKNEXT

 

最遊釈厄伝