キラ達がオノゴロのマルキオ邸に落ち着いた頃、カガリとアスランが帰ってきた。それも、ザフトの船に乗って、だ。
 ユウナをはじめとしたセイランの者達はかなり大騒ぎをしてくれたらしい。しかし、キラには二人が戻ってきてくれただけで十分だと思う。
 だが、アスランは予想外のことを口にしてくれた。
「……アスラン……」
 ユニウスセブンを落としたのは、地球軍の攻撃で家族を失ったザラ派の人間だという。そして、彼等にすれば《パトリック・ザラ》の言葉こそが正しいのだ。
 しかし、どうして彼がそれを知っているのだろうか。
「戦ったの?」
 この問いかけに、アスランは小さく頷いてみせる。
「戦うつもりはなかったんだ……ただ、どうせ砕くなら、自分の手で……と思っただけだ」
 いや、違うな……と彼は続けた。
「俺のワガママだな。自分はまだ、あの連中に負けないだけの実力があるんだ、と確認したかっただけかもしれない」
 バカだな、と苦笑を浮かべる。
「アスラン」
 彼がそんなことを言うなんて珍しい。
 逆に言えば、そうしなければいけないほど、彼は追いつめられていたのだろうか。
「……君は、自分がしなければいけないことをしただけだよ」
 だから、キラは静かな声でこう告げる。
「……キラ……」
「君達がそうしてくれたから……被害がこの程度ですんだんだ」
 さらに言葉を重ねた。
「……すまない……」
 それに彼は呟くようにこう言い返してくる。
「本当のことでしょう」
 言葉とともにキラは微笑み返す。
「それよりも……カガリは大丈夫かな」
 だが、直ぐに表情を引き締めるとこういう。
「キラ?」
「……セイランが、奇妙な動きをしていたと、バルトフェルドさんが言っていたから」
 そう言えば、アスランも表情を強ばらせる。
「……俺が、カガリの補佐が出来る立場なら、な」
 どのようなときでもフォローが出来るのだが……と彼は続けた。
「仕方がないよ、アスラン。カガリがきちんと対処してくれると信じるしかないし」
 それをいうならば、自分が真っ先に動かなければいけないのではないか。キラはそう続ける。
「……とりあえず、バルトフェルド隊長に相談をしておくべきだろうな」
 ため息とともにアスランは言葉を口にした。
「と言うわけで戻るぞ」
 マルキオ様の館でいいんだな? と問いかけられて頷く。それを確認してアスランは再びハンドルを握る。小声で「すまなかった」というと同時に、彼はアクセルを踏んだ。

 そのころ、カガリは執務室で繰り返されるセイランの主張にうんざりとしていた。
「ですから、プラントとの国交を……」
「ずいぶんと、一方的な映像だな」
 ウナトの言葉を遮ってカガリは言い返す。
「と、おっしゃると?」
 何を言い出すのか、と彼は言外に問いかけてくる。
「私が見てきた光景と違う。こうなると、どちらが正しいのか、確認しないといけないのではないか?」
 言葉とともに彼女は首をかしげる。
「確か、あそこにはザフトと地球軍の他にサハクの者とジャンク屋ギルドの人間がいたはずだ」
 彼等の証言も聞いた方がいいかもしれない。あるいは、映像も提供して貰おうか。そう続ける。
「カガリィ!」
 それが不満だったのか。ユウナが口を挟んできた。
「正しい情報を皆に知らしめるのも我らの役目だ、と思っているが?」
 その上でどうすべきなのか。国民に判断して貰うべきではないか。そう言った瞬間、彼等がいやそうな表情を作る。
「そうは言うが、カガリ。プラントの人間が軌道を変えたのは否定できない事実なのではないか?」
「なるほど。貴殿らはブルーコスモスがテロを行うから、大西洋連合との国交を断絶しろ、とおっしゃるのだな」
 即座にこう切り返す。この切り返し方を教えてくれたラクスに感謝すべきなのか。心の中でそう呟く。同時に、ここで退くわけにはいかないと、拳を握りしめた。



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