子供をラクスにたくして、キラは真っ直ぐにマルキオの元へと足を運んだ。
「マルキオ様」
「キラ君ですね。入ってください」
 声をかければ、直ぐに中から言葉が返ってくる。
「失礼します」
 断りを入れてから、キラはドアを開けた。
「このようなときに呼び立てて、申し訳ありません」
 中に足を踏み入れた瞬間、こう謝られる。
「いえ。それは構わないのですが……」
 それよりも、何故、ここに彼がいるのだろうか。そう思いながら、視線を向けてしまう。
「この機に乗じて、バカがバカをしそうだからな。念のために、と言うことだ。ヤマトは気にしなくていい」
「ですが、ノイマンさん……」
 確かに、彼がいてくれると心強い。子供達も安心するだろう。
 しかし、彼は彼で忙しいのではないか。
 実際、ここしばらく、彼の姿を見ていなかったし……とキラは思う。
「とりあえず、俺の仕事は終わったからな。後は、バルトフェルド隊長の管轄だ」
 ふっと笑いながら、彼は言葉を口にする。
「それに、お前の傍にいることも、重要な役目だ」
 暴走気味の誰かさんを止めるためにはキラの存在は重要だ。そう考えている者は少なくないし、と彼は続ける。
「確かに、カガリは止められるかもしれないけど……それは大げさじゃないかな」
 別に、それは自分でなくても出来ることではないか。アスランだって、カガリの傍にいるのだし……と思う。
「アスラン君では力不足のこともありますからね」
 まぁ、皆がそう思っているのだから受け入れなさい……とマルキオも口を挟んでくる。
「しかし、バルトフェルド氏は、ユウナ様がそのような行動に出ると考えておいでですか?」
 あきれているのかどうなのか判断がつかない微妙な口調で彼はノイマンに問いかけた。
「やりかねない、と言うのが、バルトフェルド隊長を含めた者達の判断です」
 それでなくても、大人がもう一人いる方が子供達も安心できるだろう。彼はそう言い返す。
「そう言うことだから、ヤマトはあまり気にしないでくれ」
 それよりも、子供達に紹介をしてくれないか? とノイマンは告げる。
「そうして差し上げてください」
 その後で、よければシェルターを確認してきてくれないか。そう言われて、キラは「わかりました」と言葉を返す。
「ノイマンさん?」
「あぁ。では、マルキオ様」
「お願いします。夕食後にまた、お話を聞かせてください」
 この言葉に、キラは何か引っかかるものを感じた。だが、直ぐに思い直す。ノイマンは今まで色々と調べて歩いたのだ。その話を聞きたいと思うのは当然のことだろう。
 しかし、自分はそうしない方がいい。
 知ってしまえば、動かざるを得なくなる。その結果、世界をまた混乱に巻き込んでしまったら、と考えるだけで怖いのだ。だから、と心の中で付け加える。
 もっとも、それを他の人たちに気付かれてはいけない。
 だから、顔に出さないようにしないと。そう思いながらドアを開けた。その時だ。
「……みんな……」
 何故か、子供達がそこに集まっていた。
「お客さんをリビングに案内して、と言われたの」
「おじさんがお客さん?」
 子供達は次々に言葉を口にし始める。
「おじさんじゃなくて、お兄さんと言ってくれると嬉しいんだが」
 そこまでトシではないつもりだ、とノイマンはため息をつく。
「おじさんはおじさんでしょ?」  しかし、子供達はこういって譲らない。
「……諦めてください……」
 苦笑と共にキラはそう告げる。
「いや……覚悟はしていたが……」
 ため息混じりにノイマンは言葉を返してきた。
「しかし、ラミアスさんにも同じように呼びかけているのだろうか、と思ってね」
 結構、気にしているらしいのだが……と彼は小声で付け加える。
「マリューお姉ちゃんは、お姉ちゃんだよ」
 それを聞きつけたのだろう。女の子が一人、こういってきた。
「そうそう。女の人は結婚するまでは『お姉ちゃん』で、結婚したら名前で呼びなさいって、カガリ様が言っていた」
 結局、全てはカガリの教育の賜物なのか。子供達にとって彼女がどのような存在なのか、これでわかったような気がする。
「カガリさんの言葉では、仕方がないな」
 同じように考えたのか。ノイマンは苦笑と共に言葉を口にする。
「でも、できれば名前で呼んでくれると嬉しいんだが」
 まだ、二十代だし……と呟く彼に、キラも頷いて見せた。それに子供達も何かを感じ取ったのか。
「じゃ、お名前、教えて」
 そう言ってくる。
「ノイマンだよ。アーノルド・ノイマン」
 子供達の興味津々の視線の中、ノイマンはこういった。



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