何故、こうなったのか。 目の前には、つい半日前まで自分たちの同僚の手によってテストが行われた機体が立っている。 しかも、だ。 その銃口によって、周囲を破壊している。 この光景から導かれる答えは一つしかない。あれは、間違いなく《敵》の手に渡ってしまったのだ。 「あんた達は、また、戦争がしたいのかよ!」 反射的にシンは叫ぶ。 それは相手に聞こえるはずがない、とわかっていても、だ。 「あの時と同じ光景を……何で、俺に見せるんだよ!」 攻撃によって破壊された建物。そして、それから逃げようとする人たち。 どれもこれも、シンの中の、思い出したくない記憶を刺激してくれる。 しかも、だ。 ここにはあの 「今度は……俺が、みんなを守らないと……」 しかし、大丈夫だろうか。シミュレーションならば今までに何度も繰り返してきた。だが、実際の戦闘はこれが初めてなのだ。 怖いわけではない。 だが、と思いながらもシンはエクスカリバーを相手へと向ける。 「プラントの外壁を怖さねぇように注意しないといけないよな」 メインシャフトを破壊しなければ、ヘリオポリスの悲劇は再現されない。 しかし、ここにはまだ逃げ遅れている人々がいるのだ。彼等がノーマルスーツを身に纏っているはずがない。外に吸い出されたら、それだけでアウトだ。 だから、とシンは目をすがめる。 「さっさと終わらせる!」 言葉とともにシンはインパルスをガイアへ向けて突進させた。 目の前に現れた二人を見て、レイは眉根を寄せた。 「……レイ、あの人達って……」 何かを感じたのか、ルナマリアが声をかけてくる。 「議長もおいでだ。そちらに報告をしてくる。だから、ルナはアスハ代表を医務室へ」 ケガをされているようだ、と言い返す。そうすれば、彼女は小さく頷いてみせた。 「わかったわ。指示があるまで、医務室で待機をしていただけばいいのね?」 こういう時の察しの良さには感謝したくなる。これがシンであればこっそりと説明しなければいけないのだ。 だが、ひょっとしたら彼の耳に自分の言葉は届かないかもしれない。 彼女は、シンが憎んでいると言っていい《アスハ》の代表なのだ。怒りに我を忘れて何をしてくれるかわからない。 そう考えれば、彼が出撃してくれているこの状況はありがたいと言えるのではないか。 「では、アスハ代表。こちらへ」 そう言いながらルナマリアは二人を案内していく。 「ルナは、気付いているのか?」 カガリの護衛としてきている人間の正体に、とレイは小さな声で呟いた。 自分の記憶が確かなら、彼は《アスラン・ザラ》ではないだろうか。しかし、カガリは彼のことを《アレックス・ディノ》と呼んでいた。と言うことは、別人なのか。あるいは、理由があって身分を隠しているのだろう。 恐らく、後者ではないか。 「……それだけ、オーブ国内の状況が悪化しているか、だな」 どちらにしろ、自分には判断が出来ない。 だから、とレイはそのままデッキの端末へと歩み寄る。その途中、彼の視界を破壊されたザク・ウォーリアがよぎった。 これでいったいどうしようとしていたのだろうか。 「まぁ、いい。俺は、ギルの指示に従うだけだ」 そう言いながら端末へと手を伸ばす。 「緊急事態だ。大至急、艦長に報告をしたい」 そして、ブリッジにいるメイリンへと通話をつなぐ。 『わかったわ。今、許可を取るから』 即座に彼女は言葉を返してくる。 『それと……シンは無事よ』 さらに彼女はそう付け加えた。 「了解」 今からでもフォローに駆けつけるべきなのか。それも指示を仰がなければいけない。心の中でレイはそう付け加えた。 |