とりあえず、ミネルバとの連携も取れるようになってきた。その他の部分に関しては開発時代から変わらない。しかし、万が一実戦になったならばどうなのだろう。
「レイ」
 そんなことを考えて、シンは体を起こすとまだパソコンで何か作業をしていた彼に呼びかける。
「何だ?」
 手を止めると彼は視線を向けてきた。
「明日、少し時間があるか? シミュレーションに付き合って欲しいんだけど」
 無理なら無理で良いぞ、とも付け加える。
「それなら、大丈夫だ。ただ、午後になるが」
 午前中は所用で出かけてくる、と言う彼に、シンは少し驚く。
「珍しいな。休暇でもないのに」
 だから、思わずこういってしまう。
「知人がアーモリーワンに来るからな。忙しい人だから、こういうときに顔を見せなければ、なかなか会えない」
 自分もこうしてザフトの一員になった以上、といつもの口調で彼は続ける。
「そうなんだ」
 それなら仕方がないよな、とシンはあっさりと頷いた。
「会えるときに会っておいた方がいいよな」
 大切な人に、いつ会えなくなるか。その時になるまでわからないものだし、と付け加える。
 自分だって、あんなにいきなり家族に会えなくなるなんて思わなかったのだ。今でも、あの時のことを思い出しただけで胸が痛くなる。それでも世界を憎まずにすんでいるのは、カリダやキラの存在があるからだろう。
「……シン……」
 何かを感じたのか。レイが顔をしかめながら声をかけてくる。
「大丈夫だって」
 気にしなくていい、とシンは笑う。
「直ぐに会えなくても、俺にもまだ、大切な人がいるから」
 だから、と付け加える。
「……そうか……」
 小さな声で、レイは呟く。
「それで……土産は何がいい?」
 だが、直ぐにこんなセリフを投げかけてくる。
「土産って……お前、いきなり、何を」
「せっかく、街に行くからな。何か必要なものがあれば買ってきてやろうか、と思っただけだ」
 そう言われても、直ぐには思い浮かばない。必要なものはほとんど、軍から支給されているし……と思う。
「別に、いいよ」
 だから、こう言い返す。
「そうか。なら、適当に口にできるものを買ってくるか」
 小腹が減るのはお互い様だしな、と明るい口調で彼は続けた。
「そうだな。しかし、ルナにばれると全部持っていかれそうだけど」
 どうして、女性陣は……とシンはため息をつく。
「まぁ、彼女たちにしてみればそれがストレス解消法になっているんだろうな」
 そのあたりのことも考えておく。レイはそう続ける。
「……じゃ、任せる」
 彼に任せておけば何も心配はいらないだろう。
「明日、楽しんでこいよ」
 だから、と思いつつこういった。
「あぁ」
 それにレイが笑いながら頷いてみせる。
 彼はそのままパソコンに向き直った。そして、またキーボードを叩き始めた。
 規則正しいその音を聞いているうちに、眠気が押し寄せてくる。
 シンはそれに逆らうことなく目を閉じた。



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最遊釈厄伝