新型は、その特異性から乗艦が限定される。だから、自分がその艦に配属されるのは当然だろう、と考えていた。
 しかし、実戦経験のない自分が配属されるのであれば、他のメンバーにはベテランが当てられるのではないか。そう考えていたことも否定しない。
 なのにだ。目の前にいたのは見覚えがありすぎる者達だった。
「まさか、お前達も一緒だったなんて」
 シンは目を丸くしながら言葉を綴った。
「何か文句あるわけ?」
 即座にルナマリアが言い返してくる。
「誰もそんなことは言ってないだろう!」
 普通、同期の《紅》がこんなに揃うのか、と思っただけだ……とシンは口にした。
「あら。前例はあるのよ」
 三年前に、とルナマリアは口にする。
「三年前って言うと……前の戦争の時か?」
 でも、そんな隊があったのか……とシンは呟く。
「あんた、知らないの?」
 あんなに有名だったのに、と彼女の方が驚いたように問いかけてくる。
「ルナ」
 そんな彼女の名をレイがあきれたような声音で呼んだ。
「何よ!」
「シンはそのころ、まだオーブにいたんだぞ」
 知らなくて当然ではないか。アカデミーの講義ではそのあたりのことは触れていないのだし……と彼は続ける。
「……そう言えば、そうだったわね」
 忘れていたわ、と彼女は真顔で口にした。
「態度がでかいから、ずっとプラントにいたんだとばかり思っていたわ」
「何だよ、それって」
 自分の態度のでかさは関係ないだろう、とシンは言い返す。むしろ、そうしていなければ自分がダメになりそうだったのだ、とそう考えていたことは口にするつもりはない。
「……ともかく、だ」
 ため息とともにレイが口を開く。
「お前もクルーゼ隊のことは聞いたことがあるだろう?」
 この言葉に、シンは素直に首を縦に振った。その名前はプラスとマイナス。どちらに意味も持っているらしい、と言うことも知っている。
「アカデミー史上最高のと冠されている《紅》のうち、五人までもがクルーゼ隊に配属されたのは、ユニウスセブンの悲劇の後だ。もっとも、その中で生き残っているものは、三人。そして、現在ザフトに残っているものは二人。隊長職にあるのは一人だけ、だ」
 つまり、二人は戦死したと言うことだろう。しかし、それならばどうして三人ともザフトにいないのだろうか。
「その一人がジュール隊長よ。最後の最後までザフトの一員として戦われたの」
 うっとりとした表情でルナマリアが口にする。
「他の二人……アスラン・ザラとディアッカ・エルスマンはラクス・クラインと共に三隻同盟で戦っていた。その責任を取って、ディアッカ・エルスマンは現在《紅》を返上している」
 ザフトに所属しているが、とレイはルナを無視して教えてくれた。
「……アスラン・ザラは?」
「現在、行方不明だ」
 公式には、とレイはシンの問いかけに言葉を返してくれる。
「彼の場合、前回の戦争が拡大したのは、父であるパトリック・ザラの責任だと言うこともあるのだろう」
 そう言われても、シンにはぴんと来ない。
 だが、本人には本人の考えがあると言うこともわかっている。
「ってことは、あの時、あそこにいたのかもしれないな」
 二人とも、と呟く。
「ジャスティスとバスターを使っていたはずだ」
 それにレイはこう囁いてきた。
「全然覚えてない」
 きっと、自分たちが避難しているのとは別の場所で戦っていたのだろう。シンはそう付け加える。
 自分が覚えているのは、フリーダムだけだ。
 あの蒼い翼が自分たちを守ってくれた。その時のことは、今でもはっきり記憶に刻まれている。
 自分もあの時の彼のように、誰かを守りたい。
 今でも、その気持ちは変わっていない。シンはそう心の中で呟いていた。



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最遊釈厄伝