久々に休暇が重なった。それを知ったレイがシンに声をかけてくれたおかげで、こうして顔を合わせることが出来た。
「よく、俺の休みがわかったな」
 シンは思わずこう問いかけてしまう。
「たまたまだ。ザクのことで話をしていた技術者が、たまたまお前のことを知っている人間でな」
 その人が教えてくれた、と彼は何でもないことのように告げる。
「……守秘義務はどうした……」
 シンはため息とともにこう呟く。
「そう言うな。ディセンベルからの移動が決まったからな」
 自分が、とレイは苦笑を浮かべた。だから、その前に……と思ったのだ、とも。
「俺も、多分移動になるんじゃないかな。アーモリー・ワンに」
 そう言えば、とシンは言い返す。
「そうなのか?」
「そう言う話が出ているらしい、って言うだけだけどな」
 新型のテストにもっと広い場所が必要らしい。しかし、既にディセンベルは他の施設で飽和状態だ。だから、と聞いた。そう続ける。
「正式に決まったら、連絡しようと思ってたんだけど」
 その前にレイからお誘いがあったからな、とからかうように口にした。
「なるほど」
 ふっとレイが笑う。
「なら、向こうでも会えるかもしれないな」
 アーモリー・ワンでの軍施設は一カ所に固まっているらしい。だから、部署が違っても今までよりも顔を合わせやすくなるのではないか。
「だと良いけど」
 そうすれば、色々と話が出来るし。シンはそう言って笑う。
「忙しくてさ。なかなか新しい知り合いも作れないんだよな」
 と言っても、レイをはじめとしたアカデミーで同期だった者達以上に親しくできる人間がいるかどうか。それはわからないが……とため息をつく。
「……まぁ、最近はザフトにも女性が増えてきたしな」
 意味ありげな口調でレイが言葉を返してきた。
「そう言う意味じゃねぇよ!」
 女性と付き合うとか何かと言ったことは、今の自分には考えられない。
 ただ、この地での知り合いが、軍関係者だけだ……と言うのは、少し問題ではないか。そう考えただけだ、とシンは言い返す。
「……それに、オーブのことも知りたかったし……」
 最近、ますますオーブからの移住者が増えてきた。その中に、あちらでの知り合いがいるのではないか。そうも考えたのだ。
「確かに……優秀な技術者も大勢、移住してきていると聞いている」
 いったい、あの国では何が起きているのだろうな……とレイが呟く。
「どうせ、セイランにアスハが丸め込まれたんだろう」
 それでコーディネイターを迫害しているに決まっている。シンはそう言いきった。
「あいつらは、自分たちさえよければ、他の人間はどうでもいいんだ」
 さらに吐き捨てるように付け加える。
「だから、あの人だって……」
 きっと、困っているのではないか。そう呟いたシンの脳裏に浮かんでいたのは、あの時見たキラの顔だ。
「シン?」
 誰のことだ? とレイが問いかけてくる。
「あ。悪い。俺がここに来るまえにお世話になってた所にも、結構、コーディネイターがいたから」
 その人達のことが心配になっただけ、とシンは笑う。
「その人達がこちらに来るという可能性は?」
「どうだろうな。第一世代もいたし……中には、ナチュラルの子を養子にしているコーディネイターもいるから」
 あんな人たちばかりなら、無条件で『守りたい』と思うのに……と呟く。たとえ、半ば強制的にとはいえ軍にはいることも妥協したかもしれない。
 だが、上が変わらない以上、自分一人がそう考えても意味はないのは事実だろう。
「難しいな、色々と」
 レイが呟くように口にした。
「そうだな」
 シンもそれに頷き返す。
「みんな、無事でいてくれればいいんだけど」
 確かめる方法があればいいのに。そんなことも考えていた。



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