ユウナの訪問はカガリの耳にも入ったらしい。 「キラ! 大丈夫か?」 夕方、いきなり押しかけてきた。その表情がマルキオの隣に座っている人物を見た瞬間、別のものへとすり替わる。 「ミナ様?」 呆然とした声音で彼女はそう呼びかけた。 「相変わらず騒々しいな、カガリ・ユラ」 そんな彼女に向かって、ロンド・ミナがあきれたように言葉を返す。 「少しは落ち着け。そんなだから、ユウナ・ロマがあんなセリフを口にするのだぞ」 さらに彼女はこう続けた。 「そうだ! ユウナだ、ユウナ!! キラ、大丈夫だったか?」 あのバカに何を言われた! といいながら、彼女は駆け寄ってくる。 「ミナ様が助けてくださったから……大丈夫だったよ」 マルキオもいたし、とキラは微笑み返す。 「それは良いのですが……」 隣にいたラクスが首をかしげながら口を挟んでくる。 「あの方が、とんでもない発言をしてくださったとか……」 そう言いながら視線を向けてきた。 「……とんでもない発言?」 何だ、それは……とカガリもまたキラの顔をのぞき込んでくる。それに何と言えばいいのだろうか。 そもそも、彼女たちが行っているのはどれのことだろう。とんでもない発言がたくさんあり過ぎて、キラには直ぐに判断が出来ない。 「……あの馬鹿者が彼に不埒な事を言ったことか?」 しかし、ミナには直ぐに思いあたったようだ。直ぐに彼女はこう言ってくる。 「お前を結婚をして、彼を愛人に……と思っているようだったな」 あきれたようにそう言った。 「……そうなのですか?」 言葉を口にした瞬間、ラクスが握りしめていたグラスにひびが入ったのは偶然だろうか。 「そうか」 カガリはカガリで指を鳴らしている。何か、まずい状況になっているような気がするのはキラの錯覚ではないだろう。 「どちらにしても、アスランの耳に入らなかったのは幸運でしょうか」 色々な意味で、とラクスが微笑む。 「そうだな」 置いてきて正解だった、とカガリも頷く。 「直ぐに戻らなければいけないのか?」 ミナが何かを思いついたというように問いかけてくる。 「……明日の朝、一番で戻れば執務に支障はないが?」 それが何か、とカガリが聞き返す。 「それならば丁度いい。少し話をしようではないか」 他のものに何かを言われても、自分と会っていたと言えばそれ以上追究はされないだろう。そう彼女は続ける。 「少し、あれの性根をたたき直した方が良さそうに思えてな」 ふふふ、と彼女は笑いながら口にした。 「あぁ。それに関しては賛成だ」 こういう状況であれば、内密の話をしたかったと言って納得させられるだろう、とカガリも同意をする。 「それに、わたくしもくわえて頂けません?」 ラクスもどこかすごみのある笑顔で口を挟む。 「ミナ様とは一度お話をさせて頂きたい、と思っておりましたし」 さらに付け加えられた言葉に、ミナも頷いてみせる。 「私も、だ。こういうときに同性だと楽だな」 くつくつと笑いながら彼女は視線をキラへと向けてきた。 「もっとも、君であれば加わってくれても構わないぞ」 違和感もないだろうし……と言われても嬉しくはない。何よりも、このメンバーの中に加わるなんて怖くて出来ない、とキラは思う。 「慎んで遠慮させて頂きます」 色々と怖いから、と付け加える彼に、ロンド・ミナが楽しげな笑いを漏らした。 |