ベッドの上で寝返りを打つ。 その次の瞬間、シンの瞳には無人のベッドが映し出された。 「……レイ……」 先日までそこにいた存在。それが失われただけで、ここまでこの空間は寒々しく感じてしまうものなのだろうか。 「お前が撃墜されたなんて……」 もちろん、可能性だけならば考えていた。 しかし、自分たちだけは大丈夫だ。最後まで生き残ることが出来る、と何の根拠もなく信じていたことも否定しない。 いや、そうでなければ戦えなかった、と言うべきか。 「誰、が……」 彼を撃墜したのか、とシンは呟く。 考えてもしかたがないことはわかっている。それでも、相手を知りたいのだ。 「……知って、どうするんだろうな、俺は」 仇を討ちたいのか。 それとも、と小さな声で呟く。 「お前がいたら、相談できるのにな」 すがっていたわけではない。それでも、彼を頼りにしていたというのは事実だ。 それは、自分がプラントに渡って初めてぶつかった相手が彼だったからかもしれない。その時には、こんなに親しくなれるとは思っても見なかったのに。 そう考えれば人間の関係なんてわからないものだな、とそうも思う。 「でも……やっぱ、寂しいな」 一人でいるのはあの時のことを思い出してしまうから、辛い。 この言葉とともに、シンはまた寝返りを打つ。そして、きつく瞳を閉じた。 「まずは、ラクス達と合流することを優先しましょう」 その間に、情報を入手することが出来るかもしれない。キラはマリューに向かってそう告げた。 「そうね。それが一番だわ」 オーブの軍人達が無能というわけではない。だが、キラとアレックスのフォローをするにはやはりエターナルが適任なのだ。彼女はそう言って頷いてみせる。 「エターナルにはミーティアがある。レクイエムを破壊するには、ミーティアのビームソードが必要だからな」 アレックスがさりげなくそう付け加えたのは、ブリッジの補助クルーとして乗り込んできたオーブ軍人達に対する気遣いだろう。 「そうだね。中継点である廃棄コロニーを短時間で破壊するには、確実だね」 問題は、ザフトも同じ事を考えていることかもしれない。キラは心の中で呟く。 協力をすることが出来ればいいが、そうできない可能性の方が大きいのだ。 「大丈夫だ」 キラのそんな気持ちに気付いたのだろうか。アレックスがそっとキラの肩を叩く。 「あいつさえ出てこなければ、他のザフトの連中は常識に乗っ取って動いてくれるはずだ」 レイを見ていればわかるだろう? と言われて、取りあえず納得をする。 「それに、エターナルにも三人、熟練のパイロットが乗り込んでいる。彼等もきちんとフォローをしてくれる」 オーブのムラサメ隊はもちろん、と付け加えられて、キラは頷いてみせた。 「ディアッカが出てくれば、話は早いんだけど、ね」 ミリアリアが苦笑と共に口を挟んでくる。 「別れたんじゃなかったのか?」 こう問いかけてきたのはノイマンだ。 「私は振ったつもりなんだけどねぇ。向こうが諦めてないから」 たま〜に、メールが来るわ……と苦笑を深める。その笑みが怖いと思うのはキラだけではないようだ。 「ひょっとして、内容は前に聞いたままなのか?」 どこかおそるおそるという様子でチャンドラが彼女に問いかけている。 「本当に、バカの一つ覚えよね〜」 それが降られる原因だと、どうしてそれを理解していないのか……と彼女はため息をつく。 その内容に、誰もがあきれている。 「ディアッカって、バカじゃないのに……どうしてわからないんだろうね」 自分が送っているメールの内容が降られる原因になっていると言うことに、とキラは首をかしげた。 「そうだな。まだ、キラのことを話題にした方がマシだろうに」 しかし、アレックスのこの言葉も今ひとつ納得できない。 「何で僕……」 「ミリアリアもディアッカも、二人とも気にかかる存在で、なおかつ、彼女が率先して話題にしそうな存在だから、だ」 あれはそういうわけにはいかないが……と彼は苦笑と共に付け加える。 「……意味がわからない」 自分のことなんてどうでもいいだろう、とキラは言い返す。 「わからないなら、わからないままにしておけ」 苦笑と共にアレックスはそう口にする。 「それよりも、ラクスとの連絡は付いたのか?」 話題を変えるように彼はそのままミリアリアへと視線を向けた。 「もう少し待って。ジャミングがきついの」 こちらはともかく、彼女たちの居所はあまり知られない方がいいだろう。ミリアリアはこう言い返してくる。 「そうだね」 まだ時間はあるから、とキラは彼女に同意をするように頷く。 それでも、出来るだけ早めに合流をしたい、と言うのが本音だ。できれば、戦闘に突入する前に。 「ともかく、キラ君は休憩ね」 ラクス達と連絡が取れたならば、即座に呼び出しをかけるから。マリューのこの言葉は確定事項なのだろうか。 「……わかりました」 階級はともかく、精神面で彼女に勝てるとは思わない。だから、キラは素直に首を縦に振ってみせた。 |