味方にはならない。そして、協力も出来ない。だが、邪魔はしないから同行させて欲しい。 レイがこう言ってきたのは、それからすぐのことだった。 「何を考えている?」 その真意を知りたくて、アレックスは一人で彼の元に足を運んだ。 「……結末をこの目出みたい。そう思っただけです」 貴方と 「……俺と、あいつか……」 まさか、目の前の相手からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。心の中でそう呟きながら、アレックスは相手を見つめる。 「それを見て、お前はどうするんだ?」 視線をそらすことなくこう問いかけた。 「……それは……俺も、よくわかりません……」 ただ、と彼は続ける。 「確証が欲しいのかもしれません……俺が《俺》であるという」 一番否定して欲しい人が、同じDNAを持っていると言うだけで、自分に だから、そうではないのだ、と言う確証が欲しいのかもしれない。 「……俺とあいつの関係を、お前は知っているわけだ」 まぁ、その位は当然かもしれないが。アレックスは苦笑と共に付け加える。 「謝罪をした方がいいのですか?」 そんな彼に向かって、レイがこう問いかけてきた。 「いや。そんなことは望まない」 ただ、とアレックスは付け加える。 「そのことを、絶対にキラの前では口にするな」 これだけは絶対に違えるな、とアレックスは念を押す。 「……あの人は……」 「キラの心の傷は、それだけ深い。これでも、だいぶよくなったんだ」 だからこそ、アスランの言動が許せない……と本人以外の者達は考えているのだ。もっとも、本人はそれを理解できていないようだが、とアレックスは苦笑を浮かべる。 「取りあえず、お前に対してのキラの言葉は嘘ではない。アスランのこと以外のキラの記憶は、正常なんだ」 ただ、あの男はキラが傷ついているときにさらに爆弾発言をしてくれたあげく、さっさと逃げ出してくれたのだ。だから、キラの心が壊れる前にその事実を消してしまっただけだろう。それを責められる者がいるというのか。 「……キラは、大切な人々を守れなかったことはもちろん、自分のせいで苦しんだ人間がいると言うことを知って、自分を許せなくなったんだ」 だからこそ、レイだけは救いたい。そう思っているのだ、と続ける。 「……わかりました」 だから、どこか違和感を感じていたのか……と彼は呟く。 「でも、そう言うことでしたら、邪魔はしません」 この言葉を信じていいものか。アレックスは一瞬悩む。だが、キラは『大丈夫だろう』と言っていた。だから、自分も信じてみるか。そう考えていた。 人の言葉が凶器になるとは知っていた。 しかし、それがここまで威力を持っているものだとは知らなかった……とレイは心の中で呟く。 「だから……ギルもラクス・クラインも、人々から《カリスマ》と呼ばれているのか」 二人とも《言葉》を武器にして人々の気持ちを惹きつける。だからこそ、彼等は自分の言葉に責任を持っているのではないか。 「……それは、他の者も一緒だよな」 だが、アスランはどうだろうか……とそう考えていたときだ。 「……ぐっ……」 身に覚えのある不快感が不意に体を押し包む。 このままではまずい。 しかし、今、自分の手元に薬はないのだ。 「俺は……」 ここで死ぬのだろうか。 そんな風に考えたときだ。 「大丈夫?」 言葉とともにキラが駆け寄ってきた。 「取りあえず、これ……デュランダル議長が作られたものじゃないけど、同じ程度には効くと思うよ」 そして、レイの手にピルケースらしきものを押しつけてくる。 「あの人の……送ってくれたデーターで作ったから……」 この言葉に、レイは小さく頷く。 「それとミネラルウォーター」 さらに蓋をはずしてペットボトルを渡してくれる彼の手際の良さに感謝をすべきなのだろうか。そう思いながら、ピルケースから錠剤を取り出す。そして、そのまま口に含んだ。 水と共に喉を滑り落ちていくその感触は未来へ続くものなのだろうか。 「大丈夫。君が君の意志で《死》を選ばない限り、僕は君に生きていて貰いたい、と思っているから」 君が君として、生きていてくれるなら……とキラは淡い笑みを口元に刻んでいる。 「本当は、僕が言うべき言葉じゃないのかもしれないけど」 言葉とともに彼はそっと背を撫でてくれた。その手の感触が、幼い頃に大切だった人たちが自分に与えてくれた者とよく似ているような気がする。 それはどうしてなのか。 「少し、寝る? その方が楽かもしれないよ」 話し合わなければいけないことがあるとしたら、その時でもいいだろうし。この言葉に誘われるように、レイは意識を手放した。 |