破壊された家を確認しながら、キラは眉を寄せた。
「まぁ……地下は無事だ。むしろ、そちらの方が安全だろう」
 そんな彼と共に一緒にいたバルトフェルドがこう言ってくる。
「それにマルキオ様がジャンク屋ギルドに再建をお願いしたそうですわ」
 向こうも乗り気で、さらに防御システムが充実した家ができるのではないか。ラクスもそう言ってくる。
「……でも、誰がラクスを狙ったのでしょうか」
 キラは小さな声でこう呟く。
「しかも、ザフトの新型が使われたなんて」
 プラントに反クライン派がいることはわかっている。だから、傭兵や何かであればこれほど気にならなかったのではないだろうか。MSにしても旧型であれば同様だ。
 しかし、今回、自分たちを襲撃してきたのは先日配備されたばかりの新型である。
 逆に言えば、襲撃を指示した人間にそれらを自由に出来る人間がいると言うことだろう。
「……プラントも、信用できない、ってことだ」
 自分たちが出てくるとまずいと思っている人間もいるのだろう。
 バルトフェルドはため息とともにそう告げる。
「いったい、何を考えていらっしゃるのか」
 自分を害してもその人達の利益になるはずがないのに……とラクスがため息とともに呟く。
 それはそうかもしれないが、とキラは心の中で呟く。
 だが《ラクス・クライン》がもう一人いたらどうだろうか。
 こう考えて、すぐにキラはそれを否定する。
 ラクスが《ラクス・クライン》であるのは、彼女自身の考え方や経験はもちろん、その声も大きな要素だ。
 人々を惹きつけ安心させられる声があるからこそ、人々はまず、ラクスの言葉に耳を貸す。そして、その話を聞いて最後にはその意見に賛同をするのではないか。
 それと同じ事ができる人間が他にはいると思えない。
 キラはそう結論を出す。
「……オーブにも、いられなくなるかもしれないし、ね」
 そうったら、自分たちはどこに行けばいいのだろうか。
 こう考えて視線を落とす。
「大丈夫だ、キラ。いざとなれば、どこでだって生きていけるからな」
 小さな笑いと共にバルトフェルドがこう言ってきた。
「そうですわ。まだ、わたくしの考えに賛同してくださる方もたくさんいらっしゃいます」
 それに、と彼女もまた笑みを口元に浮かべる。
「いざとなれば、ジャンク屋ギルドにお願いして雇っていただけばいいだけです」
 自分はともかく、キラやアレックス、それにバルトフェルドであれば十分に仕事を得られるだろう。そう彼女は続けた。
「……ラミアス艦長とマードックも連れて行けば完璧だな」
 何か、ものすごく楽しげなように思えるのは錯覚だろうか。キラはそう思う。
「それでなくとも……そうだな。サハクを頼る、と言う方法もあるぞ」
 さらにバルトフェルドがこう言ってくる。
「だから、俺たちの方は心配はないんだ」
 さらに付け加えられた言葉に、キラは小さく首を縦に振ってみせた。ラクスも厳しい表情になる。
「ここがこの状態だというのにカガリが姿を見せない。逆に言えば、そうできない状況にある、と言うことだな」
 その上、昨日の時点では居場所がつかめなかった。
 今まで、そのようなことはなかったのに、だ。
「あいつも、かなり厄介な状況に置かれている。そう考えた方がいいだろうな」
 下手をしたら、彼女の居所を知っているのは連中の子飼いだけ、と言う可能性もある。バルトフェルドがこう言ったときだ。
「大変よ!」
 子供達の側にいたはずのマリューがこう言って駆け寄ってくる。
「どうかしたのですか?」
 子供達に何かあったのだろうか。それとも、と思いながらキラは聞き返す。
「いいから、来てくれる?」
 うまく説明が出来ないから、と口にした。それよりもその目で見て貰った方がいいだろう。そうも付け加える。
「……どうやら、急いで行った方がいいだろうな」
 マリューがここまで言うのであれば、とバルトフェルドが言う。
「そうですわね」
 確かに自分の目で確認した方がいいのではないか。そうでなければ、間違った認識を持ってしまうかもしれない。その結果、間違った結論を導き出すわけにはいかないのではないか。
 それで苦しむのが自分だけならばまだいい。
 しかしそうでないのであれば、行動するしかないのだ。
 そんなことを考えながら、マリューの方へ駆け寄る。
「こっちよ」
 さらに案内された場所では、マードックが小さなテレビをのぞき込んでいた。キラの場所からは画面は確認できないが、アナウンサーの声は聞こえる。
「……カガリとユウナ・ロマが結婚?」
「しかも、その後大西洋連合と同盟を結ぶか」
 最初から計画をしていたのかもしれないな、とバルトフェルドは呟く。
「でも……カガリが受け入れているのでしょうか」
 ラクスがこう問いかける。
「カガリが、コーディネイターを切り捨てるような選択をするはずがないから……」
 だから、受け入れているはずがない、とキラは思いたい。
「第一、それならばあいつを監禁する必要はないだろう?」
 認めていないからこそ、先に既成事実を作ろうとしているのではないか。バルトフェルドもこう告げる。
「でも、このままでは……」
 セイランの思い通りになってしまう。
「何とか、しないといけないね」
 でも、どうすればいいのか。その方法がすぐには思い浮かばなかった。