秘密の地図を描こう
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ここは自分達が幼い頃過ごしていたドームではない。だが、同じ規格で作られているからか。どこか懐かしい。
しかし、今はそれにだけ浸っているわけにはいかない。
「ミーアがここに?」
何か話があると言うことで、ラクスとともに呼び出されたのだ。もちろん、二人だけでの外出が許されるはずがない。しっかりとラウとカナード、それにアウルが付いてきている。
その事実に内心苦笑を浮かべながら、こう問いかけた。
「そう聞いておりますわ」
ラクスの方は納得しているのか。何でもない様子で言葉を返してくる。
「おそらく、直接顔を合わせなければできない話、なのでしょうが」
それはそれで厄介ではないだろうか。彼女はそう続ける。
「そうだね」
だが、ミーアが出てくると言うことは、まだ危険度が低いと言うことだろうか。
「ミーアさんと直接お話をするのは久しぶりです。楽しみですわ」
一緒に歌えれば、もっといいのだが。ラクスはそう言う。
「カラオケボックス、にでも行く?」
確かあったはずだけど、と口にしながらキラはモバイルを取り出す。
「それはいいかもしれないな」
意外なことに、キラの言葉に賛成したのはカナードだった。
「そこならば密室だしな」
それに、と彼は続ける。
「確か、このドームにはジャンク屋が関わっている店があったはずだ」
そこならば、盗聴される心配もない。そうも言う。
「確かに、このメンバーは目立つからね」
特にキラとラクスは人目を引く、とラウもうなずく。
「……人のことを言えるんですか?」
即座にキラは言い返す。
「確かに、お二人とも目立っていますわね」
いろいろな意味で、とラクスもうなずく。
「そうかね?」
ひょっとして、彼はわかっていてこんなことを言っているのではないだろうか。不意にキラはそんなことを考えてしまう。
「だが、そのおかげで変な連中が寄ってこないだろう?」
だからいいのだ、と彼は笑った。
「……人目があるところでどうこうできる人間は少ないからな」
狙撃の心配はあるが、こちらが動いている以上、狙いを定めるのは難しいだろう。
「そういうものなのですか?」
そんなことを考えたことはなかった、とキラは言う。
「大丈夫だよ、キラ」
そう言いながら、アウルが彼の腕に抱きついてくる。
「そのときも、僕がキラを守るから、さ」
任せておいて、と彼は言う。
「ありがとう」
そんな彼に、笑みを向けた。
「でも、無理はしないでね。アウルが元気でいることが一番嬉しいから」
けがをしたら自分だけではなくネオも悲しむから、と続ける。
「わかった」
でも、ちゃんと守るって……と彼は笑う。
「僕、強いから」
言葉とともに彼は目を細める。
「うん、知ってるよ」
でも、万が一と言うことがあるから……とキラは言い返す。まだ、彼らは完全に《ゆりかご》から解き放たれたわけではないのだ。
「とりあえず、部屋を押さえておいてくれるかね?」
その間にもラウ達はこれからのことを話し合っていたらしい。
「わかった」
カナードはそういうと端末を取り出している。
「ミーアはこの先にいるそうですわ」
ラクスもまた、彼女と連絡を取っていたようだ。微笑みながらそう言ってくる。
「すぐに会えるね、それなら」
「えぇ」
二人はうなずき会うと、ミーアの姿を探すために周囲を見回し始めた。