秘密の地図を描こう
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アークエンジェルが宇宙に上がったと連絡があった。
「……やはり、キラか」
オーブの指揮官は、とアスランは呟く。
「カガリが動けない以上仕方がないが……あいつは不適任だぞ?」
誰かを切り捨てることは、彼の性格上できないはずなのだ。
「大丈夫だろう」
ミゲルがすぐに言い返してくる。
「隊長もバルトフェルド隊長も付いている。あの二人なら、キラに気づかれないうちにあれこれできるだろう」
完璧に、と彼は続けた。
「そうだな」
彼らなら大丈夫だろう、とアスランも思う。
それでも不安なのは、自分がそばにいられないからか。
「何よりも、宇宙にはイザーク達がいる」
「それが一番問題だと思うんだ」
ディアッカはともかく、イザークがキラに何を言うか。それが不安だ、とアスランは言う。
「大丈夫だったぞ」
以前会わせたときには、とミゲルは言った。
「むしろ、イザークのお気に入りだぞ、キラは」
彼はそう言って笑った。
「……俺は、そんなこと、知らない」
聞いたことがない、とアスランは思わず口にしてしまう。
「まぁ、それは当然だな」
ミゲルは即座にそう言い返す。
「あの頃のお前に、キラのことを教えるわけにはいかなかったからな」
キラもそれを望んでいなかった。だから、言わなかったのだ、とミゲルは言う。
「今のお前ならば教えていただろうがな」
さらに彼は言葉を重ねた。
「……喜んでいいのかな、それは」
「好きにしていいぞ」
にやり、と彼は笑う。
「それで、俺たちは、いつ、宇宙に上がるんだ?」
今一番知りたいのはそれだ。そう思いながら問いかける。
「早めに上がらないと、あいつらが何をしでかしてくれるか。俺は責任をとらないぞ」
アスランはそう続ける。
「そうだな……」
確かに、とミゲルもうなずく。
「アークエンジェルが宇宙に上がったと知った瞬間から、あいつらが大騒ぎをしてくれているからな」
放っておくと勝手に飛び出してくれそうだ。そう続ける。
「だろうな」
シンとレイだけではなく他の者達もキラが大好きなようだ。その彼がオーブの指揮官として宇宙に上がったと知ったとたん、フォローに行きたいと騒いでくれているのだ。
「イザーク達に任せても大丈夫だと言っているのに」
むしろ、キラにはその方がやりやすいのではないか。そうミゲルは言う。
「イザークはともかく、ディアッカがいるからな」
「あぁ、そうだな」
確かに、ディアッカが一緒なら何も心配はいらない。それだけはアスランもうなずかずにいられない。
「でも、そばにいたいと思うのも事実だがな」
そうすれば、自分が安心できる。それはわがままなのかもしれない。
「まぁ、な」
アスランのその言葉に、ミゲルもうなずいてみせる。
「あいつが強いのは知っているけど、な」
それでも、あの時期のキラを見ているから不安だ。そう彼は続ける。
「と言っても、勝手に動けないからな」
「そうだな」
彼の言葉にアスランもうなずく。
「無事でいろよ」
とりあえず、と彼は続けた。
それからすぐ、ミネルバも宇宙に上がった。