秘密の地図を描こう

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 ザフトの作戦は、一応の成功を収めたらしい。
 しかし、画竜点睛を欠くと言えばいいのだろうか。とんでもない事実がアークエンジェルへと伝わってきた。
「……ジプリールがオーブに逃げ込んだ?」
 カガリの問いかけに、モニターの向こうにいるミゲルがうなずいてみせる。
「と言うことは、セイランか」
 彼らがジプリールを招き入れたのだろう。
「あの大馬鹿どもが」
 世界情勢を見ろよ、と彼女ははき出している。
「仕方がありませんわ。そう簡単に意識を変えられるものではありませんもの。アスランの例を見てもおわかりになりますでしょう?」
 ラクスはそう言って彼女の肩に手を置く。
「あるいは、何か起死回生の方法があるのかもしれませんわ」
 いやな予想だが、と彼女はそのまま続けた。
「起死回生の方法?」
「えぇ……たとえば、ジェネシスのような、です」
 ザフト――いや、パトリック・ザラが先の戦いの時に使おうとしたあの装置。あれと似たような厄介なものをブルーコスモスも持っているのかもしれない。ラクスはさらに言葉を重ねた。
「そういえば、イザーク達からそんな話を聞いたような気がしますね」
 覚えていませんか? とニコルがミゲルに問いかけている。
『いや……俺の方には来ていないな。作戦中だったからかもしれないな』
 問い合わせてみるか、と彼は呟く。
「そうしてください。僕からも一応メールしておきますが」
 ニコルもうなずき返す。
「私たちはオーブに戻る。セイランを追い出すのにいい機会だろうし……何よりも、ジプリールを放ってはおけない」
 放っておけば、オーブはやつの盾にされてしまう。その判断は正しいだろう、とラクスも思う。
「そうだね。これ以上、被害を広げるわけにはいかない」
 キラが静かな声でそう言った。
「と言うことで、こちらの行動は決まったな」
 バルトフェルドがそう締めくくる。
『了解です。こちらも状況次第では動きますが……』
「できるだけ君たちが来てくれるとありがたいね」
 いろいろと説明の手間が省ける、とラウが言った。
『そうなると思います』
 ギルバートの判断を重視すれば、とミゲルはうなずく。
『ただ、あまり無理はされないようにお願いします。特に、キラは』
 ニコルがいるなら大丈夫だと思いたいが、と彼は続けた。
「何で、僕だけ……」
 名指しなの、とキラがぼやく。
「まぁ、あきらめろ」
 キラのイメージがそうなんだから、とカガリが彼の背中を叩いている。
「丸一年、ニコルさんとミゲルさんに迷惑をかけておいでだったのです。仕方がありませんわ」
 さらにラクスも微笑みながらこう言った。
「……そうかもしれないけど……」
 だからといって、とキラはため息をついてみせる。
「みんな、キラ君のことが好きなのよ」
 マリューが笑いながらそう言った。
「だから、あきらめて。私もたぶん、同じことを言うから」
 さすがに彼女にこう言われては、キラとしても反論できないのだろう。
「……はい」
 小さくうなずいてみせる。
『なんだ? キラも美人の言うことは素直に聞くんだな』
 からかうようにミゲルがこう言ってきた。
「マリューさんはお姉さんみたいな人だから……カガリのように実力行使には出ないけど、怒らせると怖いよ?」
 アークエンジェルの女性陣はみんなそうだけど、とキラは続ける。
「アスランですら勝てない」
 こう言われて、ラクスやカガリ、ミリアリアはもちろん、マリューも苦笑を浮かべた。
『美人で強いのか。魅力的だよな』
 そばにいたら口説いていたのに、とミゲルは真顔で言う。
『なら、大丈夫だな』
 でも、ドジるなよ……と付け加えると、彼は通信を終わらせる。
「さて」
 それを確認してからカガリが周囲を見回した。
「オーブに戻る。それでかまわないな?」
「今更だろう、カガリ」
 あきれたようにバルトフェルドが言い返す。
「ジプリールが逃げ出す前に帰りましょう」
 マリューが微笑むと言葉を口にする。
「そうだな」
 少しでも早く、と告げるカガリに皆がうなずいて見せた。


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最遊釈厄伝