秘密の地図を描こう
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ブリッジに白い軍服が姿を見せる。
「何があった?」
椅子に捕まって動きを止めながらイザークがそう問いかけてきた。
「月の裏側でなにやら作っているらしいぞ」
確認しているが、とディアッカは言い返す。
「とりあえず、本国に報告するかどうか。お前の判断を仰ごうかと思ってな」
勝手な行動をとるわけにはいかないだろう、と続ける。
「別に、かまわないがな」
きちんと報告書を出せるなら、と言い返されたのはイヤミなのだろうか。
「どちらにしろ、あまりいい感じはしないな」
そういう動きは、と彼は付け加える。
「監視だけはしておいた方がいいだろうな」
イザークはそう言う。
「そうだな」
それは自分達の裁量でも可能だ。
「厄介なことにならなければいいが……」
小さな声でイザークがそう呟く。
「大丈夫だろう」
それに、ディアッカはこう言い返す。
「ディアッカ?」
何を言っている、と彼は問いかけてくる。
「俺とお前がいるんだ。こちらは何とかなるだろう」
と言うよりも、何とかしないといけないのではないか。
「キラ達にいいところを見せないと、何言われるかわからないしな」
あいつに、と笑った。
「……ニコルか」
確かに何を言われるかわからない。そう言ってイザークは渋面を作る。
「データーがとれたら、あいつに流しておけ」
開発局にいた彼ならば、何が起きているのか可を推測できるかもしれない。彼はそう続けた。
「了解。内緒でな」
「まぁ、そう言うことだ」
ディアッカの言葉に、彼はにやりと笑ってみせる。
「じゃ、そう言うことで」
ディアッカはそう言ってうなずいて見せた。
「……あいつら、げんきでやっていてくれればいいが」
その後にこう続ける。
「アスランが馬鹿をやらかしたらしいからな」
本当に、とため息をつく。
「あの腰抜けが」
その瞬間、イザークの柳眉が跳ね上がる。
「一度、キラに嫌われるといいんだ」
そうすれば、どれだけ自分が馬鹿なのか理解できるだろうに……と彼ははき出す。
「無理だろう。キラの性格じゃ」
よっぽどでないとキラの方から嫌わないのではないか。
「あの人ですら許すんだぞ、キラは」
脳裏に浮かんだのが誰なのか。言わなくても彼にはわかるはずだ。
「……あの人か」
確かに、とイザークはうなずく。
「なら、俺たちが活を入れてやるべき何だろうが……」
現状では難しい。そう言って、彼はため息をつく。
「なら、さっさと片付けて休暇をもぎ取るか?」
アスランにけりを入れに行くために、とディアッカは笑う。
「確かに、それがいいかもしれないな」
イザークも言葉とともに笑みを浮かべた。