秘密の地図を描こう
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「アウル・ニーダ。ファントム・ペイン所属、ですね?」
確認するようにキラは問いかける
「本人の言葉では、ね」
それに、ラウは複雑な表情を浮かべた。
「……隊長?」
何かあったのか、とニコルが言外に問いかける。
「どうやら、あちらの隊長は私によく似ているそうだよ」
困ったことに、と彼はため息をつく。
「彼がそれを口にしたときに、ラミアス艦長がそばにおられて、ね」
ニコルには意味がわからないだろう。しかし、キラにはそれが彼女にとってどのような意味を持っていたのか、わかってしまった。
「それじゃ、やっぱり……」
彼、なのか? とキラは言外に問いかける。
「可能性が高くなった、と言うことだよ、キラ」
ますます、とラウは言う。
「ともかく、それは今はまだ、脇に置いておきなさい。先にやってしまわなければいけないことがあるだろう?」
その言葉に、今度はキラとニコルの方が微妙な表情を浮かべることになった。
「君たちの方も何かあったようだね」
その表情では、とラウは口にした。
「こちらにガイアが運ばれてきたので、どうしたのかなと思っていたのですが……」
「レイからメールが来たので」
二人は口々に言葉を綴る。
「レイから?」
キラの顔が見られなくて寂しくなった、と言うわけではないだろう。では、なんなのか。
「あちらにも、アウル君と同じ人間が捕虜になっているそうです。しかも、女の子だって」
それは仕方がないことだ。一歩間違えば、自分が同じ存在になるかもしれない。それは彼らもわかっているはず。
問題なのは、とキラは続ける。
「ただ、あちらで実験材料的な扱いを受けているらしくて……」
自分達が口を出せる立場ではないことはわかっている。だが、とキラは続けた。
「それでも、放っておいていいのかな、と。彼ら――というよりはシン君が爆発しそうで」
「あの子ならやるでしょうね。キラが絡んだときのアスラン並に厄介ですから」
その例えはなんなのか、そう言いたい。だが、確かに彼らは似通った部分があることも否定できないのだ。
もっとも、それ以上に彼は自分に似ているような気がする。キラはそう考えていた。
「そうだね。それについてはあの男に話をしておこう。だから、君たちは彼らに関する情報を少しでも多く集めなさい」
そうすれば、その少女を引き取りやすくなる。彼はそう続けた。
「あちらに対しても有効な手札になるだろうからね」
言葉は悪いが、とラウは言う。
「まだ、あちらには彼らと同じような存在が残っているようだからね」
ついでだから、それも保護してしまおうか……と彼は笑った。
「はい」
確かに、彼の言うことももっともだ。そう考えてキラはうなずく。
「では、すぐにでも作業にかかります」
ニコルはそう言うと再びパソコンへと向かった。
しかし、キラはそうできない。
「ラウさん」
不安を隠せずに彼を見つめる。
「大丈夫だよ、キラ。必ずいい方向へ進む」
君が信じていれば、と彼は微笑んで見せた。
「それを一番よく知っているのは君だろう?」
さらに彼はそう続ける。
「はい」
その彼に、キラは小さくうなずいて見せた。
「そうだといいです」
本当に、と続ける。そんな彼の頭を、ラウはそっとなでてくれた。