秘密の地図を描こう

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 次第に陸地が近づいてくる。
「あれが、オーブか」
 キラのふるさとか、とレイは小さな声で付け加えた。
「思ったよりも、ここは被害が少ないな」
 もっとも、それは偶然だ。ユニウスセブンの破片が落下した場所がたまたまここに被害を及ばさない場所だったと言うだけのことだろう。
 それでも、全く被害がなかったわけではない。
 陸地に近くなるにつれて浮かんでいる破片が多くなっていく。その中には先日まで日常で使われていたらしいものもある。
 この中に、キラと親しかった者達のものもあるのだろうか。そう考えた瞬間、背筋に冷たいものを押し当てられたような感覚になる。
「オーブは所詮、他国だと思っていたのに、な」
 自分にとって大切なのはギルバートで、そばにいたかったのはラウ。その二人以外どうでもいいと思っていたのに、と小さく苦い笑みを浮かべる。
 その気持ちは今でも変わらない。だが、もう一つ、守りたい存在ができてしまった。
 だが、それがいやだとは思えない。
 きっと、相手がキラだからだろう。
 他の誰でも、彼と同じように思えるわけではない。
 そう。
 例え血がつながっていても、だ。
「キラさんが笑っていてくれればいいのですが」
 あの二人が付いているから大丈夫だと思うが、と彼が付け加えたときである。
「いい加減にしろよ! きれい事ばかり並べやがって!!」
 聞き覚えがありすぎる声が耳に届いた。
「シンか」
 今度は何をやらかしたのか。思わず眉間にしわを刻みながら、声がした方向へと足を進める。
「あんたはただ見ていただけだから、なんとでもいえるよな? 別に、俺たちはあんた達に感謝されたくてやったわけじゃない」
 少なくとも、自分はそんなものいらない! とシンの声が続けた。
「いい加減にしろ!」
 さらにアスランの声が耳に届く。その声に危険サインを感じるのは自分だけではないだろう。そう判断して足を速めた。
「どうした?」
 そして、こう声をかける。
「レイ!」
 真っ先に反応を見せたのはシンだ。
「そこの代表が世迷い言を言ってくれたんだよ」
 自分はそれを指摘しただけだ、と彼は言い返してくる。
「……そう言うことは、考えても心の中だけにしておけ」
 ため息混じりにレイはそう言い返す。
「少なくとも、本人には言わないでおいた方がいい。誰もが素直に自分を省みられるわけでないからな」
 言外に、カガリは自分が何故批判されているのか理解できていないだろう……と告げる。
「……だから、オーブはブルーコスモスの言葉に左右される訳か」
 英雄なんて祭り上げられていても、結局はただのお飾りだよな……とシンは笑う。
「貴様!」
「そこまでにしておけ」
 これ以上、ここにシンをおいておくのはまずい。そう判断をする。
「ともかく、部屋にお戻りください」
 シンに関してはこちらで注意をしておく、とレイは続けた。
「しかし!」
「……まだ、三年ですよ? 前の戦争が終わってから」
 感情の整理が付かないものがいてもおかしくはない。レイはそう言い返す。
「為政者というものは、以前の政権の行ったことにも責任を持たなければいけないと認識していましたが?」
 ウズミ達がオノゴロに避難勧告を出したのが遅かったことは事実だろう。そう続ける。そのために家族を失ったものも多い。彼らの恨みがカガリに向けられても仕方がないのではないか。
「ともかく、シンにはそのようなことを口にしないように言い聞かせますから」
 言葉とともに彼の軍服の襟首をつかむ。
「では、我々は待機ですので」
 言葉とともに彼を引きずるように歩き出す。二人を部屋に帰すよりもその方が早いと判断したのだ。
「おい、レイ!」
「お前は俺と隊長のところだ」
 そう告げた瞬間、彼が変な声を上げる。しかし、それを無視してさっさと艦内へと足を踏み入れた。

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最遊釈厄伝