秘密の地図を描こう

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 確かに、その可能性がないとは誰も考えてはいない。しかし、それを実行に移すはずがない、と誰もが信じていた。
 あの地は鎮魂のための場所。
 だから、二度と戦争に利用されてはいけない。
 そんな感情を持っていたのは自分達だけではないと考えていたのだ。
 それだからだろう。
「ユニウスセブンが地球に?」
 言われた言葉の意味がすぐには飲み込めない。ただ、オウム返しに繰り返すのが精一杯だ。
「軌道を逸れて落下中だそうだ」
 レイがかすかに顔をしかめながら、再度言葉を口をにする。
「おそらく、人為的なものだろう」
 普通であれば、あと一世紀は軌道を外れるはずがなかった。だから、と彼は声を潜める。
「このままでは、地球上に多大な被害が出る」
 戦争などよりも多くの人間が死ぬ、と彼は言外に続けた。
「別に、どうでもいいんじゃねぇのか?」
 そうすれば、少なくとも戦争にはならないだろう。シンはそう言い返す。
「キラさんの大切な人たちが、まだオーブにいる、と言ってもか?」
 彼らに何かあれば、彼が悲しむ。そう言われては無視できない。
「だけど、何ができるんだよ、俺たちに……」
 落下していく大地をMSで持ち上げることなんてできるはずもないだろう、と言外に付け加える。
「……方法はひとつ、だろうな」
 レイはため息とともに言葉を重ねた。

「砕くしかない」

 ギルバートの口から出た言葉にアスランは頬をこわばらせる。
「このままでは膨大な被害を及ぼす。だから、できるだけ砕き、大気圏との摩擦で少しでも多く消滅させるしかない」
 淡々とした口調で彼は続ける。しかし、内心がそうではないと言うことが握りしめた手からわかった。
「……それでいいのか?」
 プラントは、とカガリが問いかけている。
「いろいろと思うことはありますが、被害を最低限に抑えるためには仕方がありません。親族がオーブにいる者達も多いですからね」
 もちろん、他の地にも、だ。それはカガリにもわかっているはず。
「何よりも、我々がそれを認められません」
 戦争が始まったわけではない。なのに、何の罪もない人々が死ぬのを見過ごすわけにはいかないだろう。
 ギルバートはそうも続けた。
「すでにジュール隊が先行をして作業を進めているはずです。我々もできるだけ早く合流できるよう、努力をしております」
 グラディスが脇から口を挟んでくる。
「ただ、このような状況ですのでお二人をオーブへお送りするのが遅くなるかと思います」
 申し訳ない、と彼女は続けた。
「それは当然のことだ。私たちのことよりも優先すべきことがあるからな」
 当然だ、とカガリは言い返す。その判断は正しい。
「そう言っていただけると、我々も安心です」
 ギルバートは微笑みながらそう言った。
「では、我々は準備がありますので……」
 言外に『部屋に戻っていてほしい』と彼は続ける。
「……破砕作業の時には連絡をいただけるのだろうか」
 それに、カガリがこう聞き返した。
「姫がお望みでしたら」
 彼はそう言い返してくる。
「お願いする」
 カガリは即答した。
「私は、しっかりと見ておかなければいけないような気がするんだ」
 彼女はさらにそう続ける。
「わかりました、姫」
 それにギルバートはこう言い返してきた。

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最遊釈厄伝