秘密の地図を描こう
59
そうしている間にも、レイ達の卒業が近づいてきた。
だから、なのか。寮内も落ち着かなくなってきている。あるいは、そろそろ配属が決まる時期なのかもしれない。そんなことをキラが考えていたときだ。
「そういえば、新型のデーター、お前のところにあるって?」
顔を出すなりミゲルがこう言ってくる。
「……誰から?」
「開発発ニコル経由、だな」
それが、と彼はキラの顔を見つめてきた。
「変なところから情報が漏れたのでなければいいよ」
それだけが心配だったのだ、とキラは言い返す。
「もしそうなら、また、狙われるだろうから」
自分達が狙われるだけならばいい。しかし、もし、無関係の人間が巻き込まれるとすれば困る。
「わりぃ」
そういえば、ミゲルはすぐに言い返してきた。
「ミゲル?」
しかし、何故、謝るのだろうか、と思う。
「忘れてたよ……俺たちがお前に何をしたのかを」
すぐにこう付け加えられて、何を言いたいのかわかった。
「それなら、僕だって謝らないといけないでしょう?」
だから、とキラは微笑む。
「もう二度と、同じことが起きなければ……僕はそれでいいよ」
そのまま、こう付け加えた。
「全く、お前は」
小さなため息とともにミゲルは呟く。
「だから放っておけないんだよな」
言葉とともに彼はキラの頭をぽんぽんとたたいてきた。
「ともかく、だ。データーは?」
話を戻すが、と彼は続ける。
「あるよ。これをどうするの?」
きっと、仕事に関係があるのだろう。そう考えてキーボードを引き寄せた。
「いや……卒業生の中から一人、候補生を回せって言われてな」
誰がいいか、判断材料にしようかと思って……と言われて納得できた。
「お前としては、レイを一押しか?」
参考のために聞いておくけど、と彼は問いかけてくる。
「レイでもいいだろうけど……僕としてはもっと適任者がいると思うんだよね」
キラはそう言い返す。
「何で、だ?」
意外、とミゲルは言い返してきた。
「これは、どちらかというとストライクタイプだから……的確なフォローがいると思うんだよ」
シルエットシステムの換装等も含めて、とキラは続ける。
「レイは、割と対局で戦闘を見られるから……リーダータイプだと思うんだよね」
彼のように、と心の中だけで付け加えた。そう言うところはやはり似ているのだろうか。
「だから、もったいないかな、って思って」
なかなかいないし、と付け加える。
「経験を積めば違うのかもしれないけど」
「あぁ、そうだな」
イザークがミゲルとしてやっていけるとは思っても見なかった……とミゲルはうなずく。
「どちらかと言えば、アスランの方が体調向きかと思っていたが」
「だめだよ、アスランは。自分の基準が絶対だから」
思い込んだら、絶対に曲げない。だから、カガリと馬が合うのかもしれないが……と告げる。
「そうなんだよな」
外面だけはよかったんだよ、とミゲルもため息をつく。
「しかし、参考になった」
彼はそう言って笑う。
「しかし、そうなるとあれか」
他にできそうなのは……とため息をつく。
「あれ?」
モニターに呼び出したデーターをミゲルへと見せながらキラは首をかしげる。
「シンだよ、シン」
この前会ったあいつ、と言う。
「まぁ、これからいろいろと試させてもらってから決めるけどな」
そう言ってミゲルは笑った。
「暇ならつきあえ」
さらにこう言う。
「OSが完成したらね」
そんな彼にキラはこう言い返した。