秘密の地図を描こう

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 フリーダムのパイロットに対するこだわりが消えたからか。シンの精神状態は落ち着いてきたようだ。それに伴い、下降気味だった彼の成績も復調してきた。
「これは、うかうかしていられないな」
 意地でも順位は譲れない。レイは小さな声でそう呟く。
「キラさんにあきれられるのはいやだからな」
 もちろん、あの二人にもだ。
 だから、努力するしかない。
 そうすることによって、自分の願いに近づくとなればなおさらだ。
 それ以上に、とレイはさりげなくシンへと視線を移動させる。
「お前にだけは、絶対に負けない」
 友人と言うには微妙な関係になっているが、ライバルというポジションは変わらない。
 だが、それは成績以外のことにも波及しそうなのだ。
「キラさんを守るのは、俺だ」
 もちろん、現実としてそんなことができるはずがない。だが、実際にキラのそばにいて彼を守るのは自分でありたいのだ。
 彼は、自分に時間をくれた。だから、その時間を彼のために使っていけないはずがない。
 だから、このポジションだけは、絶対にシンには渡さない、と心の中で呟く。
 しかし、最近、自分の心の中に目覚めているそれとは違う感情は何なのだろうか。
「卒業するまで、お預けだな」
 それを解明するのは、と呟く。
 自分がキラに好意を持っていること。それは否定できない事実だ。
「今は、できるだけトップに近い成績で卒業することを優先しないと」
 そうすれば、多少のわがままを言っても許されるのではないか。許されなかったとしても、キラがほめてくれるに決まっている。
 きっと、それだけで満足できるであろう自分が簡単に想像できて無意識にレイは苦笑を浮かべていた。

「レイも変だけど、あんたも変よね」
 無意識のうちにレイをにらみつけていたのだろうか。ルナマリアの声でシンはその事実に気づいた。
「どこが、だ?」
 それを気取られないようにこう聞き返す。
「……あんたも自覚してないのかしら」
 レイのあれは誰かに恋しているからでしょう、と彼女は平然と言ってくれる。
「恋? そんな相手、いないって」
 出会いもないのに、とため息をつく。
「出会いはあるでしょう」
 そうすれば、彼女は即座にこう反論してきた。
「アカデミーにだって女の子はいるのに」
「彼女たちには、あちらの方から断られるよ」
 自分の評判ぐらい知っている、と付け加える。
「あんた、わかってんならなおせば?」
「無理だろ」
 今まで培ってきた性格をそう簡単に直せるか、と思う。
「全く……人の忠告ぐらい、聞いたら?」
「いいだろ、別に」
 それにと思わず口が滑る。
「ちょっと人を傷つけちゃって、反省中なんだから」
 今は、そちらの方が優先だろう。そう言葉を重ねる。
「あんたが反省?」
 信じられない、とルナマリアは呟く。
「……ルナ……」
「ごめん。でも、あんたの口からそんなセリフが出たのは初めてじゃない。だから、びっくりしただけ」
 苦笑とともにそう付け加える。
「気になるなら、謝ったら?」
 自分が悪いんでしょう? と彼女はさらに言ってきた。
「……レイが会わせてくれねぇよ」
 彼の知り合いだ。自分は連絡先を知らない、とシンはぶすっとした表情で付け加える。
「あららら……それは、他の方法を探すしかないわね」
 まぁ、がんばりなさい……というと彼女は離れていく。
「がんばってもどうなることじゃないだろう」
 どうにかできるなら、とっくにやっている。シンはそうぼやいていた。

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最遊釈厄伝