秘密の地図を描こう
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「そうか……オーブが動いているから、アスラン達にも居場所は内緒にしていた、と」
キラの説明にディアッカは納得したというように呟いた。
「二人を信用していないわけじゃないけど……二人とも隠しておけないから」
自分の感情を、とキラは続ける。特に自分に関わることは、だ。その結果、知られてはいけない相手にばれる可能性がある。
「ラクスならその心配はないんだけどね」
いったい何が違うのだろうか、と首をかしげた。
「……あのな、キラ……ラクス嬢とカガリ達を比較するのはちょーっとかわいそうだぞ」
ディアッカがため息をつく。
「あの二人がもっとしっかりとすればいいだけだろう」
全く、とイザークが口を挟んでくる。
「相手も悪いですしね」
古狸だし、とニコルが彼らをフォローするように言った。
「あのデュランダル議長ですら手を焼いておられるんですよ。あの二人では、ねぇ」
しっかりしてほしいというのは同意ですが、と彼は付け加える。
「どちらにしろ、ここにいるうちは俺たちがフォローするだけだって」
なぁ、キラ……と言いながらミゲルが笑う。
「そうですね」
ニコルもそう言ってうなずいて見せた。
「二人の気持ちはうれしいけど……レイもいるし」
自分でも何とかなるよ、とキラは言う。
「お前が強いのはわかっているけどな。俺たちがかまいたいんだから、いいんだよ」
苦笑とともにディアッカが肩をたたいてくる。
「と言うわけで、お前は黙ってかまわれてろ」
さらに彼はこう付け加えると、わしわしと頭をなでてきた。
「ちょっと、ディアッカ!」
やめて、と言いながら彼から逃れるように身を動かしながらキラは文句を言う。
「いいじゃないか。久々なんだし」
いじらせろ、と彼は追いかけてくる。
この場合、どこに逃げれば安全なのだろうか。
そう考えて周囲を見回すが、他のメンバーは誰も助け手を出してくれそうにない。
「久々でも、いやなのはいやなの!」
こうなれば、実力行使か。それとも、と考えたときだ。
「失礼します」
言葉とともにレイが入ってくる。
「レイ!」
反射的に彼の背後にキラは隠れた。
「どうしたんですか、キラさん」
驚いたように彼が問いかけてくる。
「ディアッカの過激なスキンシップから逃げ出しただけですよ」
笑いながら言ったのはニコルだ。
「わかっていたなら、助けてくれればいいでしょう?」
思わずこう言ってしまう。
「キラがかわいいから見入ってしまいました」
「そんなの、理由になるかぁ」
反射的にこう叫ぶ。
「だって、本当のことですから」
だが、それでもめげないのがニコルだ。
「……ニコルって、そう言うところがアスランに似てる」
ぼそっとこう言う。
「それは、微妙に不本意です」
本気でいやそうな表情で彼が口にした。
「昔は尊敬していましたけどね。でも、あんな言動を見せられては……ねぇ」
さらに彼はそう付け加える。
「まぁ……いろいろあったからな」
「そうだな」
「だから、あいつは腰抜けだと言っているんだ!」
それでも、彼らの言葉にとげはない。そんな関係が少しだけうらやましいな……と思わずにいられないのは、自分が友人達から遠く離れた場所にいるからだろうか。
「でも、キラに対する言動ならレイも負けていないと思いますけど?」
さらにニコルが彼まで引き込む。
「そうでしょうか」
「……僕に聞かないでくれる?」
問いかけられて、そう言い返すしかないキラだった。