秘密の地図を描こう

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 いったい、何故、自分はここにいるのだろうか。
「死ぬはずだったのだが……」
 あのときに、とため息混じりに呟く。その声が自分のものとは思えなのは、あれから三年近く経っているからだろうか。
「本当に、君は何を考えているのかね?」
 言葉とともに視線を移動させる。
「……ごめんなさい」
 即座に、謝罪の言葉が返ってきた。
「でも、もう一度、あなたと話をしてみたかったんです」
 小さいがしっかりとした声で彼はそう続ける。
「私と?」
 しかし、その言葉の意味をすぐに飲み込むことができない。いったい、どうしてそんな考えになったと言うのだろうか。
「はい」
 それなのに、キラの口から出たのは肯定の言葉だけだ。
あんな場所戦場ではなく、違う場所で……」
 あそこでは感情に支配されてしまって、大切なことを間違えてしまいそうだったから。彼はそう続ける。
「それに……貴方たちに未来を与えること。それがヴィアの望みだったから」
 彼女たちに命をもらった自分がそれをかなえるのは当然だろう。彼はそうも言い切る。
「私の意思は無視しても、かね?」
 ため息とともに言葉を口にした。
「それでも、です」
 ためらうことなく、キラは自分の意志を告げる。
「私たちも、それを望んだからね」
 さらにギルバートが口を挟んできた。
「あのままあの世に行かれるのは不本意だよ」
 だから、文句があるのであれば自分達にも言うのだね……と彼は続ける。
「何よりも、レイが一番喜んでいる」
 いろいろな意味で、と言葉を重ねられてラウはため息をつく。
「全く……君までもがキラ君の味方とは」
「私たちの願いを叶えてくれたのだ。当然のことだろう?」
 何も言わずに消えようとした人間とは違う、とギルバートは言い返す。
「……そういうことにしておこう」
 言葉とともにラウは体から力を抜いた。そのままベッドへと身を沈める。
「どちらにしろ、今、私が生きていることは事実。ならば、現実として受け入れなければいけないだろう」
 もっとも、どれだけ生きられるかは知らないが……と続けた。
「そうだね」
 何かを考え込むような口調でギルバートが言葉を綴り出す。
「正確なところはこれから検査しなければわからないが……あと三十年は十分生きられると思うよ」
「……三十年……」
 てっきり、あと数日と言われると思っていたのに、予想以上に長い時間を言われて呆然としてしまう。
「さすがはヴィア・ヒビキ……と言ったところか」
 もっとも、とギルバートはため息をつく。
「そのために、キラ君はオーブに戻れなくなったがね」
 キラの遺伝子がクローンの延命にも役立つ。その事実をブルーコスモスもかぎつけているらしい。
 不幸中の幸いと言えるのは、それがどのような内容なのか。詳しいデーターが漏れていないことだろうか。
「どちらにしろ、キラ君の身の安全を確保する必要がある、と言うことだよ」
 それは自分達の責任だろう。ギルバートはさらにそう言葉を重ねた。
「僕は……」
「私たちがそうしたいのだよ。だから、君が気にすることではない」
 微笑みとともに彼はキラの言葉を封じる。
「だから、大人に任せておきなさい」
 相変わらずだな、と思いながらラウはギルバートを見つめていた。
 同時に、これからどうするべきか。
 死ぬと思っていたからこそ、あんな無茶もできたのだ。
 しかし、そんな自分に新たな時間が与えられた。それをどう使っていいのかがわからない。
「とりあえず、ゆっくりと考えてみるか」
 時間はあるのだから、とため息とともに呟いた。

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最遊釈厄伝