秘密の地図を描こう
20
同じ講義内容を学んでいるはずなのに、何故、レイだけが突出した実力を身につけているのだろうか。
「……そうよね……」
レイは元々まじめだけど、とシンの言葉にルナマリアもうなずいてみせる。
「それだけじゃないわよね、きっと」
何か自分達がしていない何かをしているのではないか。
ルナマリアはそう言って考え込む。
「でも、それってずるいと思わない?」
そのセリフはなんなのか。
「ずるいって、何が?」
「自分だけってところがよ」
教えてくれてもいいのではないか、と彼女は言う。
「……努力しているのはレイだ、ってことだろう?」
自分達も負けずに工夫すればいいだけではないか。シンとしては正論を口にしたつもりだった。
「そんなことはないわよ!」
しかし、彼女はそれを否定してくれる。
「動機なんだし、仲間なんだし、共有してくれてもいいと思わない?」
いや、それは違うだろう……とは思う。しかし、それをどうすればルナマリアに納得させられるかがわからないのだ。
「レイが教えないってことは、違うってことじゃないかなぁ」
とりあえず、こういうのが精一杯だ。
「なら、シンは、このままレイだけが強くなってもいいの?」
彼女はそう反論をしてくる。
「そう言うわけじゃないけどさ。なら、負けないくらい努力すればいいだけだろ」
どうすればいいのかがわからないが、とシンは心の中で呟く。
「なら、ヒントだけでもほしいじゃない」
どうすればいいのか、と彼女は言い返してくる。
「そのくらいなら、いいでしょ?」
いや、絶対にそれだけで納得するとは思えない。だが、これ以上彼女に逆らっても無駄ではないか。
「……それくらいなら、な」
もっとも、教えてもらえるかどうかはわからないぞ……と念のために付け加えておく。
「そのときはそのときよ」
そう言って微笑む彼女が怖い。
あるいは、教えてくれるまで粘るのではないだろうか。
レイもある意味厄介な人間に目をつけられたのかもしれない。でも、それも自業自得だよな……と思う。
「と言うわけで、行きましょう?」
満面の笑みとともにルナマリアがシンの手を取る。
「へ?」
その意味がわからなくて、思わず変な声を漏らしてしまう。
「だから、あんたも行くの!」
興味あるでしょう? と言いながら、ルナマリアは彼の腕を引っ張る。
「だから、何で俺まで!」
巻き込むな! と思わず言ってしまう。
「決まっているじゃない! 一蓮托生、連帯責任だから、よ」
ルナマリアはあっさりとこう言ってくれた。
「第一、あんたの方がレイのいそうな場所を知っているでしょう?」
違うの? と彼女はたたみかけてくれる。
「そりゃ、何カ所かは知っているけど……」
でも、と言い返そうとする前に強引に立たせられた。
「なら、さっさと案内しなさいよ」
そのまま、こう命じられる。
「だから、俺を巻き込むなって」
シンのこの主張はきれいに無視されたのだった。