秘密の地図を描こう
19
「うわぁ……」
キラがコピーしておいたデーターを見た瞬間、ニコルがいやそうに声を上げる。
「何を考えているんでしょうね、こいつら」
あきれるしかないです、と彼は続けた。
「だよね」
あの戦争から何も学習していないのだろうか、とため息混じりにキラは同意の言葉を口にする。
「しかし、よく見つけましたね」
感心したようにニコルが言う。
「見つけるつもりはなかったんだけどね」
無視していいならば無視していたんだけど、とキラは言い返す。
「どう見ても、厄介事を引き起こしそうだし」
しかし、無視していた方がもっと厄介な状況になりそうだから、と続けた。
「そう判断してくださってよかったです」
ニコルは苦笑とともに口にする。
「知らなければ対策のしようがありませんでしたし」
そうなった場合、どれだけの被害が出るか……と彼は顔をしかめた。
「でも、これに対処できる隊長さんっているの?」
三年前ならば大勢いただろうが、とキラは首をかしげる。
「議長が判断されるでしょうが……たぶん、イザークに回されると思いますよ」
ディアッカも苦労すればいいんですよ、とニコルはさらに笑みを深めた。
「そういえば、ディアッカ達には?」
「直接は教えていません」
ヒントはあげているんですけどね、とあきれたように付け加える。
「そうなんだ」
口ではそう言いながらも、実はそのヒントが難しいだけでは……と思わずにいられない。しかし、それをニコルに指摘することもできなかった。
ディアッカ達に自分の居場所を知られるならいい。
だが、アスランとカガリはまずいのだ。少なくとも、今は、だ。
その理由で、ラクスへの連絡も引き延ばしていたのだし……とキラは心の中で呟く。
「もう少し、世界が落ち着いていれば、直接教えてもかまわないのですけどね」
ため息とともにニコルが言った。
考えてみれば、自分だって彼に教えていないことがある。
だから、彼のことをあれこれ言えないことも事実だ。
「ディアッカとは久々にお茶をしたいんだけどね」
ため息とともにそう告げる。
「許可が出たら、すぐに教えますよ」
イヤミも含めて、とニコルは笑う。
「本当に、どうしてわからないのでしょうか」
自分があんなことを言う人間だと思われているのか、とニコルは続ける。
「いや、難易度高いと思うよ、あれじゃ」
苦笑とともにキラは告げた。
「でも、時間も上げているんですけどね」
他にもいろいろと、と彼は言う。
「昔から、彼はその手のことが苦手でしたけど……いつまでもそう言っていられませんしね」
今の状況では、とニコルは口にする。
「その点、ミゲルの方が信用できるのですが」
彼の場合は別の意味で本国から動けない。だから、と彼は続けた。
「こうなると、後一人ぐらいこちらに巻き込みたいところですよ」
ザフトの中から、とため息をつく。
「オーブ側にはバルトフェルド隊長もいらっしゃいますからね。そういう意味では安全なのですが……こちらはね。こうしてみると人材不足が明らかです」
自分達もいつまでアカデミーでのんびりしていられるかわからない。その気持ちはキラも一緒だ。
「いつかは、ここをでないといけないんだよね」
そのとき、自分はどのような選択をするのだろうか。キラには、まだ、その光景を思い描くことはできなかった。