秘密の地図を描こう

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  02  



 オーブからプラントへのコーディネイターの移住が相次いでいる。それは、セイランをはじめとする者達の政策のせいだ。
「カガリはがんばっているらしいんだけどな」
 そう言って、ディアッカはため息をつく。
「他の者達が老獪なだけだ」
 そんな連中に正攻法だけで通用するわけがないだろう。イザークがそう言い返してくる。
「そばにいるのがあの腰抜けではなおさらだろう」
 さらに彼はこう続ける。
「お前もそれで玉砕したんだっけ?」
 評議会議員だったのにな、とディアッカは笑う。
「何が言いたい?」
 どうやら、怒りのスイッチを押してしまったらしい。イザークの機嫌が急降下する。
「いや……そういうことじゃなくてだな」
 とりあえずごまかさないといけない。そう判断して、ディアッカは口を開く。
「お前がまだ評議会にいてくれたら、あいつも姿を消さなかったかなって、思ったんだよ」
 この言葉に、イザークは目を伏せた。
「……まぁ、どうだかはわからないが」
 何故、彼が姿を消したのか。彼以外にはわからないのではないか。
「たまたま、時が重なっただけだ、と言う可能性もあるしな」
 イザークの言葉もうなずける。だが、本当にそうなのだろうか、とディアッカは心の中で呟く。
「だけど、さ。確か、キラの保護者って、あのデュランダル議長だったんだよな?」
 もっとも、その頃はまだ議長ではなかったが……と言外に付け加える。
「……そういえば、そうだな」
 その彼が、何もせずにキラを行かせるだろうか。
 逆に、彼が手を貸したという方が正しいような気がする。
「と言うことは、キラが姿を消したのは何か別の意図があった、と見るべきか?」
 イザークも同じ結論に達したらしい。こう告げる。
「可能性は否定できないな」
 だが、それは何なのか。
「ゆっくり考えてみる必要があるかもしれないか」
 そのためには、プラント内部も事情ももう少し調べてみる必要があるかもしれない。
「……親父に聞いてみるか」
 まだ最高評議会に籍を置いている彼ならば、何かを知っている可能性はある。
「いっそのこと、あいつらも巻き込むか?」
 そのときだ。不意にイザークがそう言って笑う。
「……あいつらか」
 でもなぁ、とディアッカはため息をつく。
「ニコルはともかく、ミゲルはなぁ」
 あいつに手加減なくやられただろう? と思わずため息をついてしまう。
「だが、あいつらを助けたのはオーブ――アスハだからな」
 そういう点では、カガリに恩を感じていてもおかしくはないだろう。そのカガリが気にかけている存在がキラなのだ。
 それでなくても、事情が事情なだけにきちんと話をすれば協力してくれるような気がする。イザークはそう言った。
「だけどさ。この前、あいつらに連絡を入れたとき、何を話したと思う?」
 まじめな話をしようとしていたのに、とディアッカはため息をつく。
「アカデミーに幽霊が出るって言うんだぞ」
 何なんだよ、幽霊って……と彼は続けた。
「……あいつらも、最前線から遠ざかったせいで気が緩んでいるのか?」
 これは予想していなかったのだろうか。イザークも眉根を寄せている。
「まぁ、いい。新人をきっちりと育ててくれればな」
 それに、と彼はため息をつく。
「俺はそのようなものは信じていないが……オーブでは普通なんだろう?」
 彼らがそう言っているのかもしれない。ならば、そのうち収まるだろう。そう彼は続ける。
「実戦の場でそんなことを言い出さなければ、それでいい」
 戦争は終わったものの、完全に戦いがなくなったわけではない。そのような場に直面したときに軍人としてふさわしい言動ができるのであれば、と彼は言い切った。
「そうだな」
 でも、なぁ……とため息をつく。
「ともかく……あいつらを巻き込むかどうか。考えておけ」
 またすぐに出航だ。そうすれば、内密の話はできなくなる。
「了解」
 それに、ディアッカはそう言ってうなずいて見せた。

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最遊釈厄伝