その後、どのような動きが上の方であったのかはわからない。
 あの日から、本当にギルバートはもちろん、カナード達も帰ってこなくなってしまったのだ。
「……ラクスも、忙しそうだしね……」
 小さな声でキラはこう呟く。
「でも、俺がいるだろう?」
 寂しいのはわかるけど……と付け加えながら、シンは彼女の頭をそっと自分の方へと引き寄せた。
「みんな、何とか戦争を回避しようと頑張っているんだから……我慢しようぜ」
 な、と付け加えればキラは取りあえず頷いてくれる。
「何かしていないと落ち着かないって言うなら……戦争が終わったときに、みんなが明るくなれるようなプログラムを作るとかさ。そういうことを考えようよ」
 自分も手伝うから、とシンは明るい口調を作ってこういった。
「そうだね」
 その方がいいかもしれないね……とキラも頷いてみせる。
「ラクスさんの曲にさ。キラが綺麗だと思う世界をあわせてみたらいいだろう?」
 許可を貰ってなくても、後で、一番に彼女に見せれば、きっと笑って許してくれるよ……とさらに言葉を重ねれば、ようやくキラの口元に微笑みが浮かぶ。
「僕が綺麗だと思う世界……」
「そう。みんな、見てみたいと思っているんじゃないか?」
 身内限定化もしれないが、それはそれで喜んでくれるんじゃないのか、とも付け加える。
「ラクスさんの歌が癒しの効果があるって言うなら……それに綺麗な映像を点けたら相乗効果になるんじゃないかって思うんだけど」
 どんなことでもいい。
 キラが今夢中になってくれられるようなことがあるなら。その方がみんなも安心できるのではないか、とそう考えるのだ。
「……ヒーリング効果?」
「じゃなくても、落ち着けるだけでいいんじゃないか」
 綺麗な映像は見ているだけでそうなるだろう? とシンは笑う。
「綺麗な音楽でも、時々眠くなるけどな」
 レイのピアノだと八割の確率だ……と付け加えながら苦笑を浮かべた。
「それはシンだけだと思うけど」
 ピアノを子守歌にして寝るのは、とキラはさらに笑みを深めながら口にする。どうやら、自分のミスを口にしたかいがあったらしい……とシンは思う。
「いいだろう。気持ちよくなって、最後には眠ってしまうだけだから」
 レイだって、別に気にしてないぞ……と言い返す。
「まぁ、ね。あぁ、レイのピアノでもいいかな、それなら」
 確か、録音してあったのがあったよね? とキラはシンを見上げてくる。
「どこかのディスクに入っていたはずだから……後で探しておくよ」
 取りあえず、キラがやる気になってくれたならそれでいいよな。そう思ってシンは笑った。

「それ、素敵よね」
 学校に行って、シンと一緒にあれこれやっていると告げた瞬間、ルナマリアが瞳を輝かせた。
「ルナ?」
 どうしたの? と小首をかしげてみせる。
「だって、それって、キラが何の制約もなしで作るものでしょ? それも、シンと合同作業だなんて。素敵に決まってるじゃない」
 その上、BGMがレイのピアノであればなおさらだ……と彼女は笑う。
「完成したら、是非とも見せてね」
 というよりも、そのデーターが欲しい、と本気とわかる口調で口にされた。
「でも、ルナ……」
「いいでしょ? ね」
 ラクスとの仕事関係のデーターならばワガママは言わないが、プライベートのそれならば構わないだろう、と彼女はさらに付け加える。
「……みんながいいっていったら、でいい?」
 取りあえず、家の人たちのために作っているものだから……とキラは問いかけた。見せるのは構わないけれど、とも付け加える。
「もちろんよ」
 でも、とルナマリアは小首をかしげた。
「オルゴールみたいなのを作れれば、ちょっと素敵かもしれないわよね」
 プレゼントとか何かにできるわね……と彼女は口にする。
「……プログラムだけなら、すぐにできるけど……問題は機械の方かも」
 苦手なんだよね、とキラは苦笑とともに言い返す。
「でも、ラクスのディスクの特典に点けたら喜ばれるかな……ちょっと相談してみようっと」
 メールで、と心の中で付け加えた。
「あぁ、それいい。凄く素敵。でも、そうなるとキャラクターはラクス様よね」
 他のキャラもみたいかな……とルナは素直に口にする。
「そうだね。でも、本当になったら機械だけ少し貰って、こっそりと好きなキャラクターで作っちゃおうか」
 そのくらいなら、大目に見てくれないかな? とキラは付け加えた。
「ラクス様なら『構わない』と言ってくれるかもしれないわよね」
 というよりも、ラクス自身が自分のために作って欲しいと言い出しかねない……とルナマリアは真顔で口にする。
「そうかな?」
「そうよ。だって、ご自分の顔なんて、ある意味、見飽きているわよ」
 たくさん、グッズがあるから……と言われれば、取りあえず納得できる。確かに、街角でも、今は彼女の姿を見ない日がないのだ。
「でも、その前に今手を付けているのを完成させないと。それからになるかな」
 それでも、みんなが喜んでくれるなら考えてみよう……とキラは言葉を締めくくった。