待ち合わせの場所には、既にルナマリア達が待っていた。
「ルナ! メイリンちゃんも」
 こう言って駆け寄ろうとするキラを彼女たちも気が付いたのだろう。みんなが借るくてを振ってくれた。
「いいから、そこにいて! 今行くから」
 それだけならばまだしも、ルナマリアが即座にこう言い返してくる。
「……何、それ……」
 転んだりしないよ、とキラは頬をふくらませた。自分は小さな子供ではないのだから、とその表情のまま付け加える。
「しかたがないだろ。実際、キラは時々転ぶから」
 そうすれば、シンが笑いながらこう行ってきた。それだけではなく、そっと彼女の肩に手を置いてくる。
「シン……」
「今日も転ぶとは限らないけどさ。せっかく可愛い恰好をしているんだから、って気を遣ってくれたんじゃないのか?」
 着替えに戻ったら、約束の時間に間に合わないぞ……ともシンは続ける。
 それは確かに正論かもしれないけれど、とキラは心の中で呟く。だからといって、シンまでそんなことを言うことはないじゃないか。そうも思うのだ。
「俺がもう少し大きかったら――カナードさんぐらいだったら、さ――キラを抱えて走れるんだけどな」
 今はちょっと無理だから、ごめん……とシンは付け加える。こう言われてしまえば、もう怒ってもいられない。
「いいよ、もう」
 でも、そういうときは一緒に来て、支えてくれればいいでしょ……と付け加える。
「そうだよな。キラのクッション代わりはできるもんな」
 少しは懲りればいいと思ったのに、こんな風に切り替えされてキラはますますむっとしてしまう。
 でも、そんなところが少し恰好いいと思ってしまうのはどうしてなのか。
「お待たせ!」
 そんなことを考えていたときだ。
 言葉とともにルナマリアが抱きついてくる。
「僕の方から行ったのに」
 その理由を考えるよりも先に、キラはルナマリアへの文句を口にした。シンはずっと傍にいてくれるのだから、後でゆっくり考えても大丈夫だろう。こう考えたのだ。
 それよりも、今の言動に文句を言わなければいけない。
「いいの、いいの。それよりもヨウランたちは?」
 レイもいないわね……とルナマリアは付け加える。
「あぁ。あいつらは先に行った」
 ちょっと荷物が多くなったから、とシンが笑う。
「僕、一人で大丈夫だって言ったんだけど」
 シンが『絶対一緒に行く』と言い張ったのだ。それに、レイ達も自分たちだけでいいから、とシンを応援したし。何か、一人では動けないように認識されているのではないか、自分は……と考えると少し面白くない。
「ダメだよ。キラは可愛いんだから!」
「そうそう。変なのがわいて出たら大変だわ」
「そうですよ!」
 しかし、三人に即座にこう言われてしまう。
「僕は、別に可愛くないよ。ラクスやルナ達ならともかく」
 みんなそういうけど……とキラは小首をかしげてしまった。カナード達の事なら身内のひいき目と言い切れるけど、他のみんなも最近そういってくるのはどうしてなのだろうか。
「……キラ……」
 あきれたようにルナマリアがキラを見つめてくる。
「しかたがないかな、キラさんの場合」
 しかし、メイリンはあっさりと納得したようだ。
「メイリン?」
「だって、一緒に住んでいるのがレイやカナードさん、それにデュランダルさまとクルーゼ様でしょ? そこが基準になったら、キラさん、自分が普通レベルだと思うんじゃないかな?」
「……言われてみれば……だとしたら、シンはそのレベル以上、ってこと?」
 信じられない! とルナマリアが叫ぶ。
「……何か、じみにショックを受けたな、俺」
 キラがそう思ってくれているならいいだろ、とシンは即座に反論を口にする。
「シン、恰好いいでしょ? やさしいし、頼りになるし」
 それに、キラも同意をするようにもう言った。
「……ごちそうさま。キラの前で言ったのが間違いの元だったわ」
 ラブラブだもんね、あなた達……とルナマリアはため息をつきながら口にする。
「悔しかったら、さっさと相手を捕まえればいいだろう?」
「……しかたがないでしょ。こっちとしては変な奴に掴まるわけにはいかないんだから!」
 それが自分たちのせいだと言うことはキラにもわかっていた。
「……ごめん」
 キラは思わずこう言ってしまう。
「何言ってるの。キラのせいじゃないでしょ」
 バカのせいよ、バカの! とルナマリアが明るく言ってくれた。
「と言うことで行きましょ」
 そういいながら、さっさとエレカの方へと移動していく。こういう彼女の性格のおかげであれこれ救われているような気がする、とキラは心の中で呟く。
 それと同じ事をラクス達から自分が言われていると気付いていないのはキラらしいと言うべきなのか。
「そうだね。ラクス達が待っているもんね」
 ふわりと微笑むと、キラもエレカへと移動していく。
「……ひょっとして、キラが運転するの?」
「だって、シンはまだ、免許取れないよ?」
 自分はこの前ちゃんと取ったから……とキラは笑い返す。
「大丈夫だよ。カナードさんに特訓されたから、予想外にキラの運転はうまい」
 自分の足で歩かないから、転ばないしな……と言うのはほめられているのだろうか。キラは一瞬、悩んでしまう。
「無免許でもいいなら、俺やレイの方がうまいけどさ」
 流石に、敷地外ではまずいだろう……とシンが付け加えている。
「それはそうよね」
 そろそろ、自分も取った方がいいのかな……と言うルナマリアに、メイリンが何かを言い返していた。それを耳にする前にドアが閉まってしまう。
「二人とも。置いていくぞ」
 助手席に乗り込みながら、シンが彼女たちにこう声をかけている。
「あ、ごめん」
 そのまま後部座席に乗り込んできた。
「じゃ、行くね」
 彼女たちがしっかりと座ったことを確認してキラは言葉をかける。そして、ゆっくりと発進させてた。