モニターに映っているデュランダルの表情はどこか優れないように思える。それは、戦闘をくぐり抜けてきたから、だろうか。
「……ラクス嬢達が合流したからかもしれないな」
 彼女たちのことだ。キラの存在をこちらに伝えていない、と言うだけで相手を思いきり責めるだろう。それがどれだけきついものか、簡単に想像が付く。
「ラウも容赦しないだろうしな、その場合」
 と言うか、自分はその立場になりたくない。本気でそう考えてしまう。
「その上、ミナか」
 はっきり言って、最凶の布陣ではないだろうか。
「口より手の方が先にでるギナやカガリの方が、まだ扱いやすいかもな」
 カナードはカナードで、また厄介なのだ。そんなことも呟いてしまう。
「で、最高評議会議長殿は、ちゃんと納得させる手段を持っているんだよな」
 キラとラウの存在を隠していた理由も含めて……と小さな笑いを漏らす。
 そのまま、視線を向ければ同じような表情をミナも浮かべているのがわかった。
「残念ながら、今の説明では納得するわけにはいきませんね」
 その表情のまま、彼女は言葉を返している。
「二人はアスハの係累であると同時に、私達にとっても大切な存在だ。だから、何度かそちらに問い合わせをさせて頂いたはず」
 しかし、その時には返答してもらえなかった。
 それに関して、納得できる説明をしてもらっていない。彼女はそういって、モニター越しに相手をにらみつけている。
「第一、あの二人の姿も見せてもらえていないのはどうしてなのかな?」
 その理由は彼女も知っているだろうに。それでも、そういうか……とムウは肩の震えを抑えるので精一杯だ。
『先ほどの戦闘で衝撃を受けたようでね。安心して休める場所に移動してもらっている』
 どうしても、と言うのであれば、後で話を出来るように手配をしよう……と彼は続ける。
「……どこまで信用させて頂いていいのだろうね」
 だが、ミナも負けてはいない。
「……こういう駆け引きっていうのは、苦手なんだよなぁ」
 出来ないわけではないが、とムウは苦笑と共に呟いた。
「ま、俺よりも適任者がいるからお任せしておくべきだろうな」
 自分はラクス達と連絡を取る方に専念させて貰おう。かってに役割分担を決めておく。
 そんな彼の背後に、ソウキスの一人が近づいてきた。残念ながら、ムウには彼が誰なのか、判断は出来ない。
「フラガ様」
 そんなことを考えていれば、彼はそっと耳元に口を寄せてきた。
「ギナさまとカガリ様。それにカナード様がお呼びです」
 相談したいことがあると言っている。そう続けられた言葉に、ムウは眉根を寄せた。
「と言ってもなぁ」
 こっちをロンド・ミナだけに任せていいものか。
 彼女のことだから、うまく話を進めてくれることはわかっている。それでも経過を掴んでおくとおかないとでは、後々に違いが出てくるのではないか。
 そんなことを考えながら、視線だけミナへと移動させる。
 その瞬間、彼女の指先が『行け』と伝えてきた。
「しかたがねぇな」
 ここで一番偉いのは彼女だ。だから、その指示に従わないわけにはいかないだろう。
 もっとも、ごねれば許可されるような気はするが。その程度の甘えは許される関係ではあるのだ。
 しかし、別の意味で怖いしな……と心の中で呟く。
「……で? どこにいるんだ?」
 三人は、と問いかけた。
「談話室です」
 それ以前に使っておいでになった部屋は、現在、使用不可能ですので……とさりげなくとんでもないセリフを口にしてくれる。
「ちょっと確認しておくが……」
 それに不安を覚えるのは自分だけではないだろう。そう思いながら口を開く。
「何でしょうか」
「……セイランのバカ息子は、無事だな?」
 と言うか、生きているな? と続けた。
「現在、医務室で監視中です」
 即座に返ってきた言葉に、頭を抱えたくなる。
「相談事っていうのは、それに関わることか」
 しかし、この程度でそうしてはいられないだろう。そう判断をして何とか踏ん張る。
「否定いたしません」
 やはり、と言うべきなのか。それとも、とムウはため息をつく。
「本人達に確認、だな」
 そのためには移動しなければいけないか。そう判断をして体の向きを変えた。
「お前さんは、ミナのフォローを頼む」
 自分を呼びに来たソウキスに対して、こう告げる。
「了解しました」
 その言葉に頷き返すと、ムウは移動のために床を蹴った。