「狭い部屋ですみません」 しかも、キラとラウで一部屋を使わせることになって……とシンは口にする。 「俺たちは隣にいますから、何かあったら、すぐに声をかけてください」 こちらはレイだ。 「気にしなくていいよ。兄さんと一緒の方が安心できるから」 そんな彼等に向かって、キラは静かに微笑んでいる。 もちろん、その言葉が嘘ではないと言うことはわかっていた。しかし、それだけではなく、二人一緒の方が動きやすいと判断しているのだろう。 「……ですが……」 どこか不満そうな表情をレイは見せている。どうやら、この部屋割りに彼は不満のようだ。 一方、シンの方はキラだけを見つめていた。 もっとも、本人達はその心情を隠そうとしているようだが、ラウから見ればまだまだだと言っていい。 「血の繋がったきょうだいが同じ部屋にいて何か困ることでもあるのかな?」 だから、と言うわけではないが、こんなセリフをぶつけてみた。 「そういうわけでは……」 「なら、気にすることはない。それこそ私は、キラのおむつも替えてあげた経験があるからね」 くすくすと笑いながらこう告げる。 「兄さん!」 しかし、言われた内容が恥ずかしかったのか。キラが即座に非難の声を上げた。 「事実だろう?」 年少者が弟妹の弱みをいくつも握っているのはしかたがないことだ、とラウは笑い返す。 「私にしても、あの男にあれこれ握られているからね」 もっとも、年齢が近いこともあって、子供の頃には世話をされたことがない。それだけでもマシなのかもしれないが……とそう続けた。 「カナードはそれを理由にムウにこき使われているんだよ。そう考えれば、君はまだましじゃないかな?」 そういう問題ではないだろうが、と思いつつもラウはキラを説得にかかる。 「……でも、ずるい……」 上目遣いにラウを見上げながらキラはこう言い返してきた。 「ムウ兄さんとカナード兄さんの弱みは握っているけど、ラウ兄さんのはない……」 だから、と言われてしまえば苦笑を浮かべるしかないのだろうか。 「それは、あの二人が迂闊なだけだね」 でも、とラウは続ける。 「必要なら、これからゆっくりと探せばいいよ」 ここにいれば、見つけられるかもしれないよ? と小さな笑い声を漏らす。 「……わかっている……」 他にすることがないから、頑張って探すもん……とキラは口にした。 「こういうことだからね」 同じ部屋で十分だよ……とラウはレイへと視線を向ける。 「それに、二人の方が暇を感じなくていいだろうからね」 おそらく、ここにいる時間が一番長いだろう。自由に出歩くことを許可してもらえるとは思えないからね、と続ければ、彼は悔しげに唇を噛んだ。つまり、それは正しい判断だという事だろう。 「もちろん、キラだって赤ん坊だった頃とは違うからね。最低限のプライバシーは保てるようにさせてもらうが」 状況に置いては、目隠しを用意させて貰おう。 こう言ったのは、どこかに監視カメラがあるかもしれない……と判断してのことだ。 普通であれば、そのような悪趣味なことはしないだろう。閉じ込めておけば、何も出来ないと考えるのが普通だから、だ。 しかし、ここにはデュランダルがいる。 忌々しいことに、あの男は自分の実力をよく知っているのだ。だから、何をしてくれているのかわからない、とラウは心の中で呟く。 「その位は問題がないと思いますが……」 しかし、そんな必要はないだろう……とシンが首をかしげる。 「そうは言うがね。ここには脱衣所もないからね」 自分は気にしなくても、キラがいやがるだろう。そういえば、シンも納得したようだ。 「……レイ……」 「そういうことなら、何か用意するか」 その程度であれば、自分たちの権限でも何とかなるのではないか。レイはそういって頷いている。 「後、必要なものがあったら遠慮なく声をかけてください」 もっとも、とレイはそのまま視線をキラへと向けた。 「俺たちに言いにくいものでしたら、端末で申請してください」 この言葉に、ラウは心の中だけで小さな笑いを漏らす。それに気付かないまま、彼はさらに言葉を重ねた。 「外部との連絡は出来ない仕様になっていますが、その程度は出来ますから」 使い方はわかりますよね? という言葉にキラは頷いてみせる。 「じゃ、後は食堂ですね」 案内します、とシンがほっとしたような表情で口にした。 「兄さん?」 それにどうするべきか、と言うようにキラが視線を向けてくる。 「案内して貰おう。必要だろうしね」 それに、許されるなら、キラは少し食べた方がいい。ラウはそう告げた。 「でも、お腹空いてないよ?」 「君がそう思っているだけだよ」 きっと、口に入れればお腹が空いたと思うはずだ。この言葉に、キラは「そうかな」と首をかしげてみせる。 「君の食欲はストレスと反比例するからね。こう言うときは、素直に言うことを聞きなさい」 それに、キラは今度は頷いて見せた。 |