オーブ所属プラント、ヘリオポリス。
 ここは、資源開発のために作られたプラントであるからだろうか。あるいは、物資補給に丁度いいポイントにあるからか。オーブだけではなく、地球連邦やプラントの船もよく寄港していた。
 そのためか、ここのカレッジには、各国の青少年達が集うようになっていた。

「キラ!」
 自分の名を呼ぶ声に、キラは振り向く。
「ミリィ?」
 視線の先に親しい友人を見つけて、その口元に笑みを浮かべる。
 ミリィ――ミリアリア・ハウは同じラボで唯一の同性、と言う以外にも好みが近いおかげで、行動を共にすることが多かった。もっとも、最近は、彼女に恋人が出来たという理由で別行動をするようにしていたのだが。
 しかし、周囲を見ても彼女の恋人トール・ケーニヒの姿はない。
「どうしたの?」
 その表情のまま問いかけた。しかし、ミリアリアの方はどこか釈然としない、と言う表情を浮かべている。
「ミリィ?」
 どうしたの? と少し表情を曇らせてもう一度問いかけた。
 次の瞬間、彼女はため息をつく。そのまま、何かをバッグから取り出した。
「……これ……」
 それは、どう見ても封筒の山だ。メール全盛のこの時代に、珍しいな……とキラは思う。
「僕に?」
 公文書ならたまに見かけるけど、と心の中で呟きながら、こう問いかけた。
「そう。あのバカが押しつけられてきたのよ」
 この言葉にキラは『意味がわからない』と首をかしげる。
「トールが?」
 何で彼が、と思いながらさらに言葉を重ねた。
「そうよ!」
 まったく、断れ……と言っていたのに、とミリアリアは吐き捨てる。
「……何なの、本当に」
 そういいながら、キラはそれに手を伸ばそうとした。
「ミリィ!」
 だが、その前に脇から伸びてきた手がそれを奪い取る。
 いったい誰が。そう思って視線を向ければ、燃えるような赤い髪の毛が確認できた。
「フレイ……それ、僕宛だって……」
「いいの! どうせ、中はくだらないんだから」
 読む価値もないの、とフレイは一刀両断にしている。
「でも……」
「それとも、中を読んでキラは断れるの?」
 この言葉に、キラはひょっとして……と思う。
「それって、ラブレター、だったりするわけ?」
 おそるおそるこう問いかける。
「なんだと思ってたの?」
 この反応は予想外だったのか。フレイが思わず聞き返してきた。
「……レポート代行依頼」
 最近、あまりに多すぎて文面にそれらしい文字が入っているメールははじいているから、とキラは口にする。
「みんなの分は別だけど」
 だから、てっきりアナログな方法で連絡を取ってきたのかと思ったのだ。そう告げれば、二人は苦笑を浮かべる。
「キラらしいわね」
 あきれているのか。それとも、納得されているのだろうか、とキラは悩む。
「ともかく、それならなおさら読まなくていいの」
 レポートなんて、自分でやらないと意味がないでしょう? とフレイは口にする。
「……フレイがそういっても、説得力がないわよね」
 くすくすと笑いならがミリアリアがこう言い返す。
「あたしだって、確かにキラに迷惑かけているけど……でも、全部じゃないわよ!」
 自分で出来ることは自分でやっている! と彼女は主張をする。
「そうだね」
 確かに、フレイが聞いてくるのはわからないことだけだ。そういってキラも頷いてみせる。
「でしょ? だから、あたしはいいの!」
 と言うわけで、と彼女は即座に話題を変更し始めた。
「絶対にキラへのラブレターを預からないように、みんなに言っておかないと」
 でなければ、あきらめないと行けないような相手を探すことか。そういいながら、フレイは首をかしげてしまう。
「いっそのこと、キラの理想はお兄さん達の誰かだ、って言っておけば?」
 あの人達に勝てる人間はそうそういないと思うわよ。
「確かに」
 否定できないわね、とミリアリアも同意をする。
「……兄さん達に相談してみるよ」
 それに、キラは笑いながらこう言い返した。