入ってきたメンバーを見てキラは思わず首をかしげてしまう。
「アスラン……さんは?」
 同じ事を感じたのだろうか。シンが誰とはなくこう問いかけている。
「心配しなくてもいい。あいつは今、反省中だ」
 そうすれば、カガリがわざとらしいくらいに明るい口調でこういった。
「……カガリ?」
「ディアッカをおいてきた。今度は逃がさないだろう」
 だから心配いらないとイザークも口を挟んでくる。ということは、彼等がみなで出した結論なのだろう。キラはそう判断をする。
「ということで、キラ。予定が狂ってしまいましたが、少しでも話し合いをいたしましょうか?」
 アスランのことはその後で、と微笑んでいるものの『否』といわせない口調でラクスはこう言ってきた。
「他にも話し合わなければいけないことがあるようですし」
 今回の一件も含めて……という指摘はもっともだろう。
「そうだね」
 アスランのことはまだまだ時間があるはず。だから、優先しなければいけないことを考えよう。キラはそう判断をする。
「それで今回の襲撃者達なのですが」
 ともかく、報告だけはしておかないと。そう思いながらキラは口を開く。
「生き残りは全てあちらの艦に放り込んでおくように指示しましたが……彼らも疲れていると思うので、交代の監視要員を派遣してもらってかまいませんか?」
 アスランのことがなければ、真っ先にこれを指示するはずだったのに、と思いながら言葉を口にする。
「そうだな。誰の指示か、向こうの船にデーターが残っているかもしれんし」
 時間が経っているから消されている可能性もあるが……とバルトフェルドはため息をついた。
「本当。あいつももう少しタイミングを考えてくれればいいものを。後手後手に回っているな、今回は」
 早めに動いていられれば、必要なデーターも入手できたかもしれないが……と彼は続ける。
「……一応、ロックはしてありますけど」
 自爆されると面倒だったので、生命維持装置以外は外部からロックさせてもらった、とキラは告げた。
「キラさん! いつの間に……」
「シン君達がMSの相手をしてくれているとき」
 ちょっと余裕があったから、ウイルスを作って送りつけたのだ、と付け加える。あちらのフォーマットはこちらに出向している地球軍の技術者から聞いていたものと変わらなかったし、とも。
「普通できませんって……」
「というか、余裕がないぞ、そんな」
 シンとフラガがそれぞれため息とともにこうはき出す。
「まぁ、キラだからな」
「キラですもの、ね」
「周囲が優秀であれば、そのくらいの余裕はできて当然だな
 しかし、カガリ達三人はこんな会話を交わしている。その中にイザークの言葉があったことは喜んでいいのだろうか。少しだけ悩んでしまう。
「それならば……何も心配はいらんな。ダコスタ君に行ってもらえばいいか。キラ。ロックの解除法は?」
 キラの言葉から対処を即座に導き出したのだろう。バルトフェルドはこう言ってくる。
「いつものパスにしてあります。取りあえずは」
 言外に、必要があればすぐに変更してもらってもかまわない、と付け加えた。
「そうか。では、後は何人か――あぁ、地球軍から来た者達は悪いが排除させてもらおう――一緒に行かせればいいな」
 これで、何とか収拾が付けられるかもしれない、と彼はようやく安堵のため息をつく。
「なら、後はそちらの予定だけだな。俺は一旦席を外すが、勝手に進めていてくれ」
 任せても大丈夫だな、といわれてキラは素直に首を縦に振る。そのくらいであれば、彼等の助言がなくてもできると思うのだ。
「お前達のことだから心配はいらないと思うが……まぁ、視察は明日にしてくれ」
 今はごたついているからな、と言い残してバルトフェルドは司令室を後にする。
「じゃ、取りあえず、報告をしようか」
 現状を、とキラが微笑めば、カガリとラクスは静かに頷いてみせた。

 何で自分が貧乏くじを引かなければいけないのだろうか。
 目の前でぶつぶつと呟いているアスランを見つめながら、ディアッカは小さなため息をつく。
「……アスラン」
 ともかく、この鬱陶しい空間から少しでも早く抜け出したい。そう思いながら、彼はアスランに声をかける。
「うるさい!」
 そうすればアスランの口から返ってきたのはこんなセリフだ。
「うるさいってなぁ……それはこっちのセリフだろうが」
 まじで何もわかってないのか、とそういいたくなる。というよりも、自分がは踏めてあったときの《アスラン・ザラ》は本当にどこに行ってしまったのか、とも思う。
「ともかく」
 だが、それでは話が進まない。そう思って改めてディアッカはアスランに問いかける。
「何で、キラはお前がいないとダメだ、と思うんだ?」
 まずはそれから整理しろ、と付け加えた。
 本当、甘いよなぁ……と心の中で呟く。それでも、このままアスランに付き合うよりはマシだろう、と考えてしまうのだ。
「……何故って……」
 アスランの方もディアッカの言葉に何かを感じ取ったのかもしれない。ふっと考え込むような表情を作る。
「キラは泣き虫でお人好しで……」
 それはもう何度も聞いたセリフだ。そして、それに関しては否定できないかもとディアッカも思う。
「自分の得意なことや興味があることにはものすごい集中するけどその他のこと――特に日常生活に関しては、ずぼらもいいところだし……ストレスでしょっちゅうものが食べられなくなるし」
 それはディアッカもよく知っている。
「でも、そのフォローはお前でなくてもできるんじゃないのか?」
「だけど、キラは実は人見知りなんだぞ。ついでに、好き嫌いも多いから、俺が気をつけてならないとダメだし、嫌いなものは徹底的に迫害するから、代わりに俺が食べてやったこともある」
 それは一体、いくつの時の話ですか、とちょっと言いたくなってきた。
「そのくせ、人に頼られるとすぐ同情して失敗をするし、おやつをもらったからといってふらふらと着いていったりもするし……注意をしたら『悪い人じゃない』って反論してくるし」
 だから、それは一体何歳の時の《キラ》の話だ、とディアッカは思う。少なくとも、アークエンジェルで一緒になってからのキラは食は細いものの、好き嫌いはなかったように記憶をしている。
「……ここで誰に連れ去られるんだよ……」
 バルトフェルドやフラガ、それにシンがいつでもそばにいるのに……と思わず呟いてしまう。だが、それはアスランの耳には届いていないらしい。
「夜は夜で、よく眠れないらしくて魘されたあげく、人のベッドに潜り込んできたし……」
「……アスラン……それって、いつの話だ?」
 さすがに聞くのが辛くなってきたから、ディアッカはこう問いかける。
「いつって……月にいた頃と……あぁ、魘されていたのはマルキオ様のところで一緒に暮らしていからもあったな」
 他のことは、どうだったかな……とアスランは首をかしげて見せた。
「おっさん達がさじを投げたくなったのもよくわかるぜ」
 そんな彼を見て、ディアッカは呟く。
「キラに愛想を尽かされるのも、近いな」
 この言葉がアスランの耳に届かなかったのは、幸いだったのだろうか。そんなことも考えてしまうディアッカだった。