もう何度目になるのだろうか。
 そんなこともわからないくらい、キスを繰り返している。
「……シン……」
 角度を変えようとした彼が唇を離した瞬間、キラは彼の名を口にした。
「好きです、キラさんが……」
 それに負けじと、シンはこう囁く。
「……うん……」
 小さく頷けば、また唇が重ねられた。
 考えてみれば、こんな風に何度もキスを交わした経験なんてない。ただ一度体を重ねたことがある《彼女》とのそれは、もっと淡泊で、そして苦いものだった。
 今ではその理由もわかっているし、それについて何も言うつもりはない。
 あの時、世界を包み込んでいたモノが、自分たちの判断を狂わせ、結果的にあのような状況へと追い込んだのだ。
 ただ、お互いの寂しさを紛らわせたかっただけ。
 だから、彼女のぬくもりもおぼろげにしか覚えていないのだろうか。
 それでも、もし、あの時、彼女を守り切れていれば、もっと別の関係を築くことができたのかもしれない。そうであれば、自分も彼女も《誰か》のぬくもりを手にすることができたのではないか。そんなことすら考えてしまう。
 だが、彼女の時は永遠に止まり、自分もそんな未来を捨てたはずだった。
 誰かを好きになることはあるだろう。
 誰かを愛することもあるはずだ。
 なぜなら、その二つの感情が、平和を悠久のものにしていく根底となるはずだと思っていたから。
 でも、とキラは心の中で呟く。
 自分が誰かに恋をする日は二度と来ないのではないか。
 そんな感情は、きっと、あの光の中に消えてしまった。だから、アスランの気持ちも受け入れることができないのだろう。そう考えていた。
 でも、とキラは思う。
 こんな風に自分の心の中に踏み込んでくる存在がいるなんて予想もしていなかった。
 触れあった唇だけではなく、体全体が熱い。
 そう思ったときだ。
「……んぁっ?」
 不意にシンの手が背中から腰へと移動をする。その瞬間、ぞくぞくとしたものが全身を駆け抜けていく感覚に襲われた。
「キラさん……」
 シンが吐息だけを絡ませながら囁いてくる。
 間近で自分を見つめてくる深紅の双眸が、熱に浮かされているのがわかった。
 それは、自分に触れているからだろうか。そんなことも考えてしまう。
「ひょっとして……感じてる?」
 ねぇ、と彼は嬉しそうな口調でさらにこう問いかけてきた。
「かんじ、て?」
 でも、うまく言葉の意味がつかめない。だから、思わずこう聞き返してしまった。
「……だって、ここ……」
 立ってる、と付け加えながら、シンの膝がキラの中心を軽く刺激してくる。
「ひぁっ!」
 その瞬間、キラの体が大きくはねた。
 同時に自分のそこが形を変えていたのだと、初めて認識をしてしまう。それがものすごく気恥ずかしい。
 思わず、首を左右に振って自分の状況を否定しようとした。
 しかし、どんなに否定しようとも、この体の熱さまではできない。むしろ、どんどん体温が上がっていくような気がしてならない。
 その事実がさらにキラの羞恥を煽ってくれる。
「可愛い、キラさん」
 そんなキラの仕草がシンの何かを刺激したのだろうか。こんなセリフを口にしてくれた。
「……バカ」
「バカでいいです……だから、もっと、触っていい?」
 ここにも……といいながら、シンはキラのそこに布の上から触れてくる。そのぬくもりが信じられないくらいに熱い、とキラは思う。
「……だめ……」
「だめ? 痛いことも苦しいことも、何もしないって。ただ……二人で、気持ちよくなりたいだけ」
 だから、とシンはまた唇を重ねてくる。そうして、キラの言葉を封じたところで、彼の指がウエストから滑り込んできた。そして、直接それに触れてくる。
「ん、んんっ!」
 キラの悲鳴とも言えない声がシンののどに吸い込まれた。
 しかし、それすらも彼を刺激しているのかもしれない。シンの指がゆっくりとキラのそれに刺激を加えてくる。
「キラさん、いや?」
 どうしてもいやなら、やめるけど……とシンはキラを刺激をする手を止めないまま問いかけてきた。
 嫌かと言われれば、そうではない。
 ただ、恥ずかしいだけだ……とキラは気づく。でも、それはどうしてなのだろう。答えを探したくても、この状況では無理だ、と思う。
「……バカ……」
 そんなことを聞くな、と言い返しながら、キラもシンのそこに触れる。
「キラさん!」
 やられるだけでは気に入らない。だから……と思いながら、おずおずと布の上からそこに刺激を加えてみる。
「二人で、気持ちよくなろうか」
 その意図を察したのだろう。シンはこう囁いてくる。
「んっ」
 その言葉に促されるまま、キラもまたそれに直接触れるために手を動かしていった。