「どうやら、今のところ不具合はなかったようだな」 ついでに、フォーメーションの方も問題はなさそうだし……と出迎えてくれたバルトフェルドが口にする。 「えぇ。あれが一番、機体と相性がいいようです」 バックユニットユニットの中で、とキラは頷く。ついでに、シンとも相性がいいらしい。 だからといって、他のユニットの開発を中止するわけにはいかないのも事実だ。 「あれとランチャー型のはまだいいのですが……ソードシステムがまだバグを起こすんですよ」 やはり、ソードとビームサーベルを共用しようというのは無理だったのではないか。別々に装備させた方がいいような気がする。 「まぁ、モルゲンレーテの連中の意気込みはわかるけどな」 エクスカリバー並の大きさのビームサーベルを開発したい。いや、それは不可能ではないのだが、エネルギーの消費量の点は解消できなかったのだ。 だから、実剣の表面をレーザーでコーティングするような形式にしたらしい。しかし、それがそもそも機体に装備されているビームサーベルのシステムと干渉をしてしまう。それがどうしても解消できないのだ。 「ということは、しばらくは高速機動ユニットと遠距離攻撃用ユニットの二つをメインにしなければいけないと言うことか」 まぁ、それだけでも使えるようになっただけマシか……とバルトフェルドは口にする。 「そうだな。今回のようなことは、これから頻繁に起こると考えなければならねぇだろうし」 二カ所同時で、という可能性だって否定できないのだ。そう考えれば、使える機体は多い方がいいだろう、とも。 「……そうかもしれませんが……でも、出撃しないですめば、それが一番いいんですけど」 ぼそり、とキラはこう呟く。 「みんな同じ気持ちだと思うぞ、それは」 だが、現状としては、まだまだ難しい。女性陣がそれぞれの権力を使って平和を恒久的なものにしよう……と考えているようだが、それに逆らうものも無ではない。実際、自分たちの自由になる力を手に入れようと、ここを襲撃してきて返り討ちにあったのは、ついさっきのことだ。 「難しいですね」 どうして平和を甘受できないのだろうか……とキラは思う。いや、それで自分たちの利害が阻害されている、と考えているからなのだろう、ということは簡単に想像が付く。しかし、それよりももっと大切なものがあることに気が付かないことは問題だろう、とも。 「どこにも、新しい状況を認識できない頭の固い奴はいるって事だろう」 身近にも一人いるだろうが……とフラガが笑いながら口を挟んでくる。もっとも、世の中から見れば、あれの方がまだましと認識されているようだがな、とも彼は付け加えた。 「ムウさん……」 それが誰のことであるのかわかってしまって、キラはため息をつく。 「迷惑をかけられている当人とその周囲以外は対岸の火事で高みの見物……と言うところだろうしな」 しかも、バルトフェルドまでが同意をする辺り、もうなんと言っていいのかわからなくなる。 「今回のこともしっかりと聞きつけて、自分も行かせろ! と騒いでいたらしいからな」 現在、最優先監視対象だそうだ……と言う言葉に、キラはまたため息をつくしかできない。 「……アスランって、何を考えているんだろうね……」 いい加減、いい年なんだし……と思うのは自分だけなのだろうか。 「あれはもう、固定観念に縛られて、それだけしか見えないって所だろうな」 それを壊してやらないうちはどうにもならないと思うぞ、とバルトフェルドは苦笑を浮かべる。 「何。キラに恋人でもできれば一発だとは思うけどな」 別の意味でショックが大きすぎて寝込むかもしれないが……とフラガが茶々を入れてきた。 「ムウさん……遊ばないでください」 僕で……とキラは呟く。 「本気なんだがな、俺は」 それが一番的確な方法だと思うぞ、とフラガはしっかりと言い返してくる。 「ともかく、だ。新型……いい加減、名前ぐらい付けてやらないと、話がしにくいな」 新型とかXナンバーで今まではすませてきたが……とバルトフェルドが呟く。 「あぁ、そうだな」 確かに、いい加減決めないと、とフラガも頷いた。 「オーブ風だと、どこかの神話から取ってくるんだっけ?」 「えぇ。オーブ建国に尽力した人の生まれ故郷の神話だそうです。でも、暁は違ったのかな?」 その国の言葉だと言うことは間違いないけど……とキラは小首をかしげる。 「でも、ザフトや地球連合は違いますよね」 人数はそちらの方が多いのだし……とキラは口にした。 「……でも、ここの責任者はお前だしな」 「そうそう。そう考えれば、オーブ風でもかまわないと思うぞ」 第一、カガリはもちろん、ラクスですら異論は挟まないだろうし、とバルトフェルドが断言してくれる。 「そうかもしれませんが……」 そういう問題でいいのだろうか。キラはそう思う。 「まぁ、あれとフリーダムが中心になって、それぞれのフォーメーションを考えればいいと言うことだな。何パターンか作っておくか」 できれば自分もそっちに参加したいものだ……とバルトフェルドがぼやく。 「諦めるんだな。こう言うところには最年長者が座ることになっているんだ」 だからこそ、若い者は安心して無茶ができる、とフラガが言い返す。 「……言っておくが、君と俺とじゃ、一つしか違わないんだぞ。三十路すぎればみな同じだ」 「いや、一歳差は大きいと思うぞ」 何か、だんだんくだらない方向に話がずれていっているような気がするのはキラの錯覚ではないだろう。しかも、それを喜々として行っている様な気がすることも、だ。 「……取りあえず、名前でも考えようかな……」 目の前のこれが終わらない限り、自分が口を挟むことは不可能だろう。 それならば、少しでも有意義だと思えることをしていた方がいいだろうし、とキラは心の中で付け加える。 「シン君の機体だから、彼のイメージで付けた方がいいのかな」 しかし、自分が無意識に何を口走っているのかキラ自身、気づいていない。そして、その呟きを耳にした大人達がどのような表情を作ったかも、だ。 それはそれで幸せだったかもしれないが。 |