戦争が終結して、一年近くが経った。
 相変わらず、ブルーコスモスの残党のテロは収まっていない。だが、その頻度も落ちてきたような気がする。
「そう言えば、そろそろ、レイが戻ってくる頃じゃない?」
 制服の襟元を整えながら、ルナマリアがこういった。
「そうだと聞いている。治療が終わったそうだから」
 昨日、メールが届いた……とシンは言い返す。
「多分、今日、着いたら会えるんじゃないかな?」
 さらにこう付け加えたときだ。
「何で、あんただけがそんなに詳しいのよ」
 自分は知らないのに、とルナマリアが不満そうに口にする。
「メールしているからに決まっているだろ」
 書けば返事をくれるし、とシンは言う。
「そう言うお前は、あいつにメール書いているのかよ」
「……書いてないわよ」
「なら、仕方がないじゃん」
 連絡してないなら、とシンは続けた。きっと、自分ではなくてもレイは返事を返してくれたはずだ。そうも付け加える。
「仕方がないでしょ! あんたと違ってこっちにはデリカシーがあるんだから」
 用事もないのにメールなんて出せるか、と彼女は逆ギレをしてくれた。
「……なら、俺だけなんて言うんじゃねーよ」
 ぶつぶつとシンが文句を口にしたときだ。
「シン! ルナも!!」
 大変だ、といってヴィーノが近づいてくる。
「どうかしたのか?」
 そんなに大騒ぎをして、とシンが聞き返す。
「アークエンジェルが近くにいるって!」
 この言葉をすぐには理解できない。
「アークエンジェルが? 何で」
 オーブ軍の旗艦はクサナギだ。だが、キラはクサナギよりもアークエンジェルに乗り込むことが多い。そのせいか。最近は、オーブ軍の象徴といえるのはアークエンジェルだと言う者までいる。
 そのアークエンジェルが何故、と思う。
「……会談の予定でもあったか?」
「聞いてないわよ、そんなこと」
 もっとも、自分たちがパトロールに出ている間に決まった可能性もあるが、とルナマリアは言い返してくる。
「アスランなら何か知っているかもな」
 そう呟くと、シンはきびすを返す。
「あいつなら、知らなくても確認できるだろうし」
 こう言い残すと、彼はさっさと歩き出した。

 そのころ、アスランはブリッジにいた。
「……お久しぶりですね、ラミアス艦長」
 それにカガリも、と彼は続ける。
『別に、お前の顔なんて見たくはなかったがな』
 即座にカガリがこう言い返してきた。
『近くにいるのに、声をかけないと、キラが怒るからな』
 本当に、妙なところで口うるさいんだから……と言う彼女の表情からは、ニュースなどで見ている《アスハ代表》の面影は見られない。それはいいことなのか、と思いつつアスランは問いかけの言葉を口にする。
「そのキラは?」
 ブリッジにいると思っていた彼女の姿が確認できない。たんに自分の見えない場所にいるだけなのか、と言外に付け加えた。
『あいつなら、二ヶ月前からプラントだ』
 ラウと一緒に、とカガリは言い返してくる。
「はぁ?」
 何故、とアスランは思わず口にしてしまう。
『そろそろ次世代を、とみんな――特におじさまとおばさま――が騒ぐからな……キラも、おばさまに押し切られたというわけだ』
 オーブでもコーディネイトが出来ないわけではない。だが、あちらですれば大騒ぎになる。それよりは、プラントでひっそりと行った方がいいだろう。そう判断されたのだ、と彼女は言う。
「お前が来たと言うことは?」
 まさか、とアスランは呟くように疑問を口にする。
『内緒だ』
 自分はこれからギルバートと会見を行う。そのために来たし……と彼女は笑う。
『知りたければ、ラクスにでも問いかけるんだな』
 そんなことが出来るか、と思わずにはいられない。しかし、それ以外に知る方法がないのであれば、無視をされるのを覚悟でメールぐらいは送ってもいいのだろうか。
「……とりあえず、目的地が一緒なら、同行させて頂きますわ」
 今まで黙って聞いていたグラディスが口を開く。
『そうして頂けると安心ですわ』
 にっこりと微笑みながらマリューがこう言い返してくる。それすらもアスランの耳を右から左へと通り過ぎていった。



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最遊釈厄伝