「みんな、僕に何か、隠してない?」
 そう口にしながら、キラはカガリをにらみつける。
「何のことだ?」
 わからないな、とカガリは笑い返した。
「本当に?」
 言葉とともにキラはさらに彼女へと顔を寄せていく。
「本当だって。第一、私にそんなことをしている暇があると思うか?」
 それに対し、彼女はこう言い返してきた。
「カガリ本人は無理でも、他の人に頼むことなら出来るでしょう?」
 味方をするものだって多いではないか。キラは言外にそう続ける。
「第一、ラクスが何かをしているのに、カガリが聞いていないなんて、あり得ないよ」
 ラウまで巻き込んでいるくせに、と彼女の顔をにらみつけた。
「……だから、本当に私は知らないんだって。許可だけは出したがな」
 任務に支障がない程度なら彼らを呼び出していいという……とカガリは笑いながら言い返してくる。
「第一、私がラクスに口で勝てると思っているのか?」
 彼女も、こちらの不利益になることでなければ折れるはずがないし。そう付け加える。何よりも、この忙しさでは、早々に認めた方がいいと思っただけだ。さらにため息を付け加える。
「まったく……連中は自分たちが事実上敗北したとわかっているのか?」
 それともブルーコスモスの支配から抜け出せて、気が大きくなっているのか……とさらに付け加える。
「カガリ?」
「何で、パーティだの何だのの予定が増えているんだ?」
 もっとも、と彼女は続けた。
「デュランダル議長とラクスには何か思惑があるようだがな」
 だからといって、自分まで巻き込むな……と彼女がまたため息をついたときだ。
「そうだ、キラ」
 ふっと思い出した、というようにカガリが呼びかけてくる。彼女の表情からいやな予感を感じてしまう。
「何?」
 思わず逃げ腰になりながら、聞き返した。
「……パーティがあると聞いて、マーナが張り切っている」
 それに、彼女はいやそうな表情と共にこういう。
「何言っているの? 僕はただの軍人だから、そう言うところには出なくてていいんでしょ?」
 というよりも、参加しないから……とキラは言い切る。
「残念だが、お前にもちゃんと招待状が来ている」
 だから、と彼女は意地の悪い笑みを浮かべた。
「あきらめろ! 事前に作らせておかなかったお前が悪い」
 一着でも作らせておけば、マーナがあそこまで燃えなかったに決まっている、と彼女は続ける。
「とりあえず、軍服を作らせたときのサイズで仕立ててきたそうだ。諦めて仮縫いしてこい」
 自分なんて、着たくもないドレスの仮縫いもしていたんだぞ! と彼女が口にしたのが合図だったのだろうか。今まで閉め切られていたドアからメイド達が姿を見せた。
「ちょっと、カガリ!」
 というよりも、自分がそう言う場に出るときには軍の礼服ではないのか。
 キラの問いかけは口から出ることはなかった。
 勢いよく、隣の部屋へと引きずり込まれてしまう。そこには既に色とりどりの布やレースなどが広げられていた。
 いったい、どれだけの時間、ここで過ごさなければいけないのだろうか。そんなことすら考えてしまう。
「頑張れよ」
 カガリののんきな声がそんな彼女にさらに追い打ちをかけてくれる。
 ドアの向こうで、彼女がいったいどのような表情をしていたのか。残念ながら、キラからは見えない。しかし、きっと何かを企んでいるような笑みを浮かべていたに決まっている。
「やっぱり、カガリもぐるだったんじゃないのぉ!」
 キラのこの叫びはドアによって遮られてしまう。
「さぁ、キラ様。服をお脱ぎくださいませ」
 さらにメイド達が彼女の体から布をはぎ取り始めた。
「大丈夫ですよ、キラ様。ラウ様もお気になさいませんから」
 ここにいるのは女性ばかりだから、とマーナが声をかけてくる。それすらも、今のキラには追い打ちをかける言葉にしか思えない。
「すぐに辞表を出してやる!」
 却下されるに決まっているが、そう言わずにはいられないキラだった。



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