予想していたブルーコスモスの残党の襲撃は、締約式までなかった。
「だからといって、気を抜くわけにはいかないが」
 ため息とともにムウが言葉を口にする。
「そうだな」
 ラウもまた、それに頷いて見せた。
「一網打尽にするのであれば、今以上に好機はない」
 そして、誰もが油断をしている可能性がある……と彼は付け加える。
「とりあえず、お前はキラ達の側にいろ」
 周囲の警戒は自分たちがするから、とさらに言葉を重ねた。
「別に、お前達が会場内にいても、気にするものはいないと思うが?」
「……俺は、そうだろうが……問題はあの三人のほうだ」
 本人達にそんなつもりはなくても連中に利用される可能性がある。いざとなれば、そんな彼らを止める方法はあるが、できれば使いたくない。ムウはそう続けた。
「それに、いざというときにすぐ動ける人間がいた方がいいだろう?」
 きっと、何かあるに決まっている。彼はそう言いきった。
「否定はしないが……キラへの説明はお前がするように」
 がっかりするのはわかりきっている。だから、とラウは言い返す。
「お前な!」
「言いだした人間がするものだろう?」
 そう言うことは、と笑う。
「……仕方がないな」
 自分で言ってくるよ、と口にすると彼はきびすを返す。
「……キラが絡むと素直じゃないか」
 最初にあったときは違ったような気がする。それとも、自分の受け止め方が変わったのか。
「まぁ、私も他人のことは言えないがな」
 キラが自分を救ってくれなければどうなっていたか。
「とりあえず、あちらは任せておいて、私は会場内での事を確認しておくべきだろうね」
 警護に関して、と呟く。
「あちらの様子も確認しておくべきだろうな」
 さらに彼は続けた。
「さて……誰に声をかけるのが一番早いかな?」
 言葉とともに、彼もまた行動を開始するために歩き出す。
「そう言えば、キラも今はブリッジだったな」
 ムウが何といいわけをしてキラから許可をもぎ取ろうとしているか。それを目にするのも楽しいかもしれない。そんなことも考えていた。

 警備の問題は、主にキサカを中心に検討されていた。主に会場の警備とカガリとキラの護衛問題だが、自分が口を出す必要はなさそうだ、とラウはすぐに判断をする。
「そうなると、後はラクス嬢かな?」
 彼女はどうするのだろうか。
 表舞台に戻るとすれば、今が一番、よい機会だろう。それはギルバートも同じ考えではないか。
「後で確認しておくべきだろうね」
 それに関しても、とラウは呟く。
 何にせよ、キラが悲しむことがなければいい。そのための努力であれば……と考えていたときだ。
「よかった。ここにいたんですね」
 言葉とともにミリアリアが駆け寄ってくる。
「何かあったのかね?」
 そのような気配はなかったが、と言外に問いかけた。
「というか……キラには内緒で協力して欲しいことがあるんですけど……ダメですか?」
 にっこりと微笑みながら彼女は言い返してくる。
「ちなみに、発案者はラクスさんとカガリさんです」
 既に、ディアッカ経由でギルバートの協力も得られる手はずになっている……と彼女は続けた。
「それはそれは……断ったら怖い結果になりそうだね」
 カガリだけならばともかく、ラクスも絡んでいるのであれば……とラウはため息をつく。
「それで? 私は何をすればいいのかな?」
 ため息とともに問いかける。
「ものすごく簡単なことです」
 笑みを深めながら言葉を綴る彼女に、ラウは苦笑を返すしかできなかった。



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