この場にマルキオも来るという。その話を聞いたのは、ギルバートの元に向かう直前だった。
「当然だよね」
 マルキオが来るのは、とキラは呟く。
 ナチュラルでありながら、彼以上に二つの人種から尊敬されている人を知らない。
 ブルーコスモスという核を失ったナチュラル達に取ってみれば、彼とカガリがすがりつける存在なのだろう。その中で、どの国からも一定の距離を置いているのは彼だけだ。
 だから、彼以上に立会人としてふさわしい存在はいないだろう。
 キラはそう考えていた。
「……ついでに、お時間を取って頂ければいいんだけど」
 相談をする、と続ける。
「あの方のことだ。君の頼みであれば『否』とは言うまい」
 むしろ喜んで相談に乗ってくださるだろう、とラウが言葉を返してきた。
「それに、今回は口実もあるしね」
 本来の目的を彼らに知られることはない。そうも続ける。
「それは、そうなのですが……」
 それはそれで恥ずかしいような気がする、とキラはため息とともに口にした。
「まぁ、それはその時で構わないだろう。もう一組のこともあるからね」
 どう見ても、彼の場合、全てのお膳立てを整えて目の前に押しつけなければ動く気になれないらしい。だから、と続けた。
「まったく……困った男だ」
 ため息とともにラウはエレカのドアを開ける。そのまま、キラに乗るように促す。彼女が素直にシートに身を沈めれば、彼は運転席へと移動をする。そして素速く車内へと滑り込んできた。
「どちらにしても、ラクス嬢とカガリが乗り気だからね。あの男も逃げられまい」
「……ステラも妙に張り切っていますし」
 何故かはわからないが、とキラは微苦笑と共に告げる。
「でも、あの子の場合、いいことなのかな?」
 男の子二人は、流石男の子というべきなのか。マードックとウマが合っている。彼の方も懐かれたのが嬉しいのか、こまめに面倒を見ているようだ。
「相変わらず、ムウさんが一番のようだけど……三人とも、今までみたいにべったりじゃないし」
 戦うこと以外にも色々な選択肢を与えられるかもしれない。
「確かにね」
 小さな笑いと共にラウは頷いてみせる。同時に、彼はエレカを発進させた。
「あの二人にもいずれ子供が生まれるだろうしね」
 マリューの体力を考えれば早い方がいいだろう。しかし、ムウがそれを望むかどうか。
「いっそ、彼らの子供もコーディネイトした方がいいのかもしれないね」
 彼が心配しているのは、三年前、宇宙空間を漂っているときに浴びた放射線のことだろう。
 だが、コーディネイトすれば、その影響はなくなると言っていい。
「それについても、とりあえずギルに相談してみるかね?」
 自分たちが勝手に決めていいことではないが。そう続けた。だが、相談することぐらいは構わないだろう、とも。
「こう言うときに、あの男の研究分野は役に立つな」
 昔は煩わしいだけだったのに、とラウは苦笑と共に続けた。
「そうなのですか?」
「あぁ……私たちを完全に治療できたわけではないからね。それでも、生き長らえるための手段だけは与えてくれた。不本意な検査と共にね」
 感謝すべきだったのだろうが、検査の内容がないようだったので相殺されてしまった。そう言ってラウは苦笑を浮かべる。
「内容は聞かないでくれると嬉しいが」
 そこまで言うのであれば、相当いやな検査だったのだろう。キラはそう推測する。
「わかりました」
 ラウがそう言うのだ。自分は知らない方がいいに決まっている。
「もっとも、あの男に受けさせるのは楽しいかもしれないね」
 彼はそう言って笑った。
「……ラウさん、それは……」
 自分が『不本意だ』と思うことを彼にはさせるのか。言外にそう呟く。
「あれだけ皆に心配をかけたのだ。かまわないと思わないかな?」
 しかし、彼はそう言って笑みを深める。
「どちらにしても、そうすればあの男も安心するだろうしね」
 そちらの方がメインなのではないか。しかし、と思わざるを得ないキラだった。



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