だが、彼女たちと同じ事を考えていたものは他にもいた。
「キラ! 護衛をつけずに出歩くんじゃない」
 顔を合わせた瞬間、カガリがこう言ってくる。
「ラウだろうと、そこの三人だろうと、誰でもいい! 必ず、傍につけろ」
 いいな、と彼女は念を押すように口にした。
「……何で?」
 そこまでしなければいけないのか。言外にそう問いかける。
「一応、僕だってコーディネイターなんだけど」
 真顔でそう付け加えた。
「だが、お前は正式な訓練を受けたことがないだろう?」
 それに、と彼女は言い返してくる。
「お前を押さえられたら、オーブ軍は動けなくなるからな」
 今のキラはそれだけ重要人物なのだ。そのことを自覚しておけ、と彼女は続けた。
「……そう言われても……僕は僕だし……」
 いきなり変われと言われても困る、とため息をつく。
「わかってる。それでもなれてもらわないといけない」
 とりあえず、ラウ達に言っておくが……と彼女は笑った。
「カガリ?」
「それが一番確実だろう?」
 違うのか? と聞き返されてしまう。
「……違わないけど……何か違うような気がする」
 そんなのは、と思わずぼやいてしまった。
「オーブに戻ってしまえばそれほど警戒しなくてもいいんだろうが……」
 ここでは、どこにブルーコスモスがいるかわからない。だから、念には念を入れなければいけないのだ、と彼女は言った。
「そのあたりのことは連中が詳しいだろうからな」
 だから、任せておけばいい。カガリはそう締めくくる。
「話は変わるが、デュランダル議長からお前とラウに『個人的に話がしたい』という連絡が来ているが?」
 どうする? と代わりに彼女は問いかけてくる。
 それはきっと、レイに関わることだろう。自分の方から声をかけるべきだったかもしれない、とキラは思う。
「僕も相談に乗って欲しいことがあったから……丁度いいかな?」
「……議長に?」
 自分ではダメなのか、とカガリがショックを隠せないという表情で問いかけてきた。
「うん。デュランダル議長は遺伝子研究の権威だってお聞きしたから」
 オーブではコーディネイトに関する研究はここ数年、禁止されていたし……と続ける。それが誰の仕業か、言わなくてもカガリにはわかったはずだ。
「……そう言うことか」
 確かに、自分では役に立たない。それどころか、オーブでキラの相談に乗れる人間はいないだろう……と彼女もとりあえず納得をする。
「ならば、仕方がないのか」
 それでも、面白くないのは事実だが……と彼女は続けた。
「ラクスはラクスであれこれ動いているようだし……ひょっとして、別の意味で一番暇なのは私か?」
 プライベートでは何もない、とため息をついてみせる。
「……アスランに会ってきたら?」
 ぼそっと、キラが呟くように言った。
「何故!」
「だって……アスラン、ずいぶん変わったよ?」
 だから、もう一度話し合ってもいいのではないか。
「いやだね」
 アスランが謝ってくるなら考えるが、と彼女は言う。
「そもそも、何で私から声をかけなければいけない? ふったのはこちらだぞ」
 悪いのはあいつに決まっているではないか。それなのに、と彼女は続ける。
「……カガリがそう言うならいいけど」
 本当に意地っ張りだから、とキラは心の中だけで付け加えた。それでも、これは彼女たちの問題だから、自分が無理強いするのは気がする。
「でも、話をしないで後悔しないでね?」
 それでも、というようにこう付け加えた。



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