「アスランがアークエンジェルに?」
 シンは思わずルナマリアにこう詰め寄る。
「本当よ。先ほど、あちらから『許可する』という返答が来たそうだもの」
 メイリンがそう言っていた、と彼女は口にした。それよりも、さっさと話しなさいよ、と彼女は続ける。
「レイ……」
 それに素直に従うと、シンは視線を移動させた。
「……あぁ」
 わかっている、と彼は厳しい表情で頷く。
「とりあえず、一人で行ったのかどうかを確認しないといけないだろうな」
 ハイネか誰かが付いていってくれたならば構わない。そうでなければ追いかける必要があるだろう。レイはそうも続けた。
「まったく……以前ならばともかく、今のキラさんはオーブの准将だぞ」
 下手なことをすれば、即座に国際問題だ。シンはあきれたように言う。
「その位は理解していると思うけど?」
 アスランびいきだから、だろうか。ルナマリアが苦笑と共に口を開く。
「理解できていても、予想外の言動を取るのがアスランなんだよ」
 そんな彼女に、シンはため息とともに言い返す。
「普通なら、正論を投げつけただけでやめるだろう?」
 だが、アスランはさんざん正論を言われていたにもかかわらず、何度も繰り返している。だからこそ、皆に《危険人物》と認定されているのだ。
 シンのその言葉に、ルナマリアも流石にフォローできないと思ったのだろうか。
「まぁ、そうだけど」
 でも、いくら何でもこの状況で、しかも、アークエンジェルに行って馬鹿なことをするだろうか。彼女はまだそう言う。
「あそこは、キラさんの親衛隊のようなものでしょう?」
 エターナルがある意味、ラクス親衛隊だと言っていいのと同じように、と彼女は続ける。
「お前、どこからそんな情報を仕入れてきたんだ?」
 自分たちだって、そこまでは知らないのに……とシンは思わず口にする。
「内緒」
 にっこりと微笑みながら彼女は言い返してきた。
「ともかく、行動するなら、さっさとすれば?」
 ここで油を売っていていいのか。そう言われて、シンは現実に戻る。
「そうだな」
 後で聞けばいいか。そう付け加えると、視線をレイへと向ける。そうすれば、彼は頷いてみせる。
「艦長の所に行くのはまずいよな?」
 そのままこう声をかける。
「デッキでいいだろう」
 MSで行くにしてもシャトルを使うにしても、結局、デッキを経由する事には代わりがない。
「ヨウランかヴィーノなら知っていそうだしな」
 さらに彼はそう続ける。
「言われてみればそうか」
 彼らであれば、そのあたりの事を把握しているだろう。何よりも、同期だから声をかけやすい。
「じゃ、急ごうぜ」
 何かあればすぐに行動できるように、とシンは提案をする。
「そうだな」
 確かに、少しでも早い方がいい……とレイも頷く。
「それにしても、本当に何を考えているのか」
 このタイミングで動くとは、と彼は顔をしかめる。
「艦長も、何故、許可を出されたのか」
 その表情のまま、彼ははき出す。
「言われてみればそうだよな」
 彼女もアスランが何をしてきたのかを知っているはずだ。それなのに、何故……と思う。
「何か理由があるのか?」
 それも調べておいた方がいいのだろうか。シンもそう呟く。
「とりあえず、アスランに同行者がいるかどうか、だな」
 最優先すべきなのは、とレイは言い切る。それにシンも異論はない。だからしっかりと頷いて見せた。



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