キラ達がそんな日々を過ごしている間に、オーブとプラントと、そして大西洋連合の間では条約の内容が決まったらしい。締結式の日取りが決まった。
 それに合わせて、キラ達も移動を開始することになる。それにエターナルももちろん、ミネルバとボルテールも同行してきたのは、きっと、カガリ達の気遣いによるものだろう。
「……それは構わないのですが……」
 小さなため息とともにキラはラウを見上げる。
「みんなで、ムウさんをいじめすぎです」
 小さな声でそう付け加えた。
「いじめてなどいないよ」
 柔らかな笑みと共に彼はこう言い返してくる。
「ただ、これからどうするつもりなのかと問いかけただけだよ」
 色々な意味で、と彼はさらに笑みを深めた。
「特に、結婚問題とかね」
 これに関しては自分よりもバルトフェルドの方が深くつっこんでいた。彼はそう付け加える。
「……年貢の納め時だろうに、未だにぐだぐだ言っているからね、あの男は」
 待たせたのだ。いい加減腹をくくって将来のことを話し合えばいいのに……と彼は続けた。
「……ラクスが同席していなくてよかったですね、それは」
 彼女のことだ。さらに輪をかけたセリフを投げつけてきそうだ。そうなれば、ムウが再起不能になりかねない。
「……ノーコメントにしておいた方がいいだろうね」
 それに関しては、とラウは言い返してくる。
「流石に、ここで彼女の怒りを買うのは得策ではないからね」
 彼はさらにそう付け加えた。
「普段なら気にしないでしょうが……今は、ちょっとぴりぴりしていますからね、ラクス」
 それも無理はないのではないか。彼女の元に集まっている情報の量を考えれば、キラにはそうとしか思えない。
「少しでも手伝えればいいのですが……」
「ラクス嬢の仕事を肩代わりできる人間は、ここにはいないからね」
 押しつけられるとすれば、アスランかイザーク、それにディアッカぐらいではないか。彼はそう続ける。
「そうなのですか?」
 アスランはともかく、イザークやディアッカも……と思う。
「彼らは皆、最高評議会議員経験者を親に持っているからね。それなりの教育は受けているはずだ」
「そう言えば、イザークさんは一時期、評議会議員だったそうよ」
 背後からミリアリアが口を挟んでくる。
「ミリィ?」
 いったいどうしたの? といいながら、キラは視線を向けた。
「その中の一人から『話がしたい』という連絡があったのよ」
 どうする? と彼女は問いかけてくる。
「その中の一人って……アスラン?」
 他のメンバーなら何も言わずに教えてくれるのではないか。そう思いながらキラは聞き返す。
「そうよ。無視してもいいかと思ったんだけど、ね」
 うるさいから、と彼女は苦笑を浮かべながら付け加えた。
「……そう、アスランが……」
 どうしよう、とキラは呟く。
「とりあえず、ラクスさんに相談してみれば?」
 ミリアリアがこう提案をしてくる。
「でも、ラクスは忙しいみたいだし」
 呼ぶのは申し訳ない。キラはそう言い返した。
「だからよ」
 しかし、ミリアリアはこう言って笑う。
「あいつなら、ラクスさんが八つ当たりしても大丈夫でしょう?」
 なれているから、と彼女は続けた。
「そう言う問題じゃないと思うけど……」
 確かに、ラクスの毒舌に離れているだろうが。キラはそう言って苦笑を返す。
「そう言う問題よ」
 だが、ミリアリアは満面の笑みと共にこう断言をする。
「大丈夫だよ、キラ。私も同席するからね」
 その時は、とラウはそう言って微笑む。
「……わかりました」
 久々に彼と話をするのもいいのではないか。きっと、自分なりに何か結論を出したのだろう。それがよい方向へ向いていてくれればいいが。キラはそう考えていた。



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