もっとも、キラ達はカガリの意志には反して、すぐにオーブに戻ることが出来なかった。
 地球軍の掌握を押しつけられたのだ。
「……まぁ、仕方がないだろうな」
 苦笑と共にバルトフェルドが言ってくる。
「お前らが元地球軍だ、って言うのはみなが知っていることだ。連中にしてみればザフトよりもまし、というところだろう」
 何よりも、ここにはナチュラルがいるからな……と彼は続けた。
「……僕はコーディネイターですけどね」
 意味がわからない、というようにキラは首をかしげる。
「だが、お前はナチュラルだろうとコーディネイターだろうと、区別しないだろう?」
 だからいいんだよ、と彼は笑い返す。
「ところで、あの野郎は一緒じゃないのか?」
 自分の傍にいるのがステラ達だと言うことに気が付いたのだろう。彼は不審そうにこう問いかけてくる。
「ラウさんはムウ――ネオさんと二人だけで話があるといって部屋に……」
 アークエンジェルの中で何かが起きるとは思えない。だが、万が一のために……と言ってムウが彼らを自分の護衛としてつけてくれたのだ。
 キラはそう説明の言葉を続けた。
「なるほど」
 ニヤリ、と彼は笑う。
「なら、俺も参加させて貰おうか」
 色々といいたいこともあるから、と口にしながらバルトフェルドが体の向きを変える。
「バルトフェルド隊長?」
 何を、とキラは慌てて問いかけた。
「男同士の会話を楽しんでくるだけだよ。あぁ、ラクスが連絡を欲しいそうだ」
 声をかけてやれ、と言うと同時に、彼はさっさと歩き出してしまう。
「……まさか、それだけのためにこちらに来たわけじゃないよね? バルトフェルド隊長……」
 もっと別の目的があったのではないか。そう思うのだが、彼の姿は既にキラの視界の中にはない。
「ラクス、来ているの?」
 その上、彼女も大好きなステラが目を輝かせながら問いかけてきたのだ。
「来てないよ。でも……お茶の相談かな?」
 時間が合えば実際に顔を合わせることも可能だろう。そう思って言葉を返す。
「どちらにしても、連絡を入れないとね」
 でないと、ラクスがすねる。
 彼女がすねると、多方面へと被害が及ぶのだ。しかし、それを彼女に告げるわけにはいかない。
「その時にステラがお願いしたら、きっと、会いに来てくれるよ」
 代わりにこういった。
「その時には、ミリィに頼んで、クッキーでも作ってもらおうか」
 この言葉はアウルとスティングに向けたものだ。それだけで、二人とも嬉しそうな表情を作る。
「じゃ、ブリッジに行こう」
 そして、エターナルに連絡を入れてもらおうかと告げた。
「うん!」
 言葉とともにステラがキラの腕に抱きついてくる。
「そうしたら、一緒におやつ食べようぜ」
 さらにアウルがこう言ってきた。
「……そうだね」
 微苦笑と共にキラは頷いてみせる。
「プリン、あるといいな」
 うきうきとした表情でアウルが言う。そのまま、反対側の腕に抱きついてくる。
「……アウル」
 あきれたようにスティングが彼の名を呼んだ。
「何言ってるんだよ。スティングも好きだろう?」
 プリン、とアウルが即座に言い返す。
「否定はしない。しかし、ステラはともかく、お前がキラに抱きつくのはまずいぞ」
 ラウに怒られるだろう、と即座にスティングが反論をした。
「……それは、いやかも」
 彼らに、いったい、何をしたのか。そう思わずにいられないキラだった。



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